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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.15  処遇(2)当事者間で決める場合の問題点

セルフ・エンプロイドは、自分で交渉する

 21世紀型人材マネジメントでは、自律型プロ人材である組織内一人親方の質と量が、競争に勝つためのカギと考えている。そのため、組織内一人親方に好ましい生態系を創ることを目標としているが、組織内一人親方の原型は、セルフ・エンプロイドとよばれる、自律した専門家で、経営者でもあり従業員でもある人のことである。

プロのスポーツ選手や芸術家などがその仲間で、この人々は、商品としての自分の値段は、自分で交渉する。大リーグの野球選手のように、代理人を立てて交渉をおこなうこともあるが、原理としては、「自分で交渉する」である。この原型から考えれば当然、組織内一人親方も自分で交渉するのが正しいということになる。Vol. 14で述べた分類によれば、当事者間の交渉で決まるという区分に入る。
 

当事者が強力な場合は問題を生みやすい

 当事者間の交渉で決まるケースは二通りで、個人が雇いたい人と直接交渉する場合、もう一つは、労働組合のような団体が、個人の替わりに強い相手と交渉する場合である。どちらも当事者が強力な場合は、問題を生みやすい。

前者の場合、交渉に当たり留意しなければならないのは世間相場である。いくら当事者間で決めたといっても、例えば、CEOのストック・オプションや退職金が、世の中の水準からみて妥当でなければ、株主などの利害関係者に受け入れられない。

後者の場合は、地方自冶体の労働組合のケースをあげることができる。労働組合は選挙に協力することを条件に、市の財政状態や世間相場に関係なく、市長から高い賃上げを獲得してしまうことが可能である。民間の場合でも、強力な産業組合が高い賃上げを獲得すると、それにひっぱられて他の産業の賃上額も高めになり、組合がない事業にまで影響、インフレが一層深刻になるということは歴史的にも経験済みである。当事者間の交渉で決まるというのは、原理的に見て一番良いようだが、物事はそう簡単ではない。当事者間だけで決めてしまうとことの問題点を熟知したヨーロッパでは、労使交渉に第三者の介入が必要だと考えている。日本の場合は、労使の社会的責任論でこの問題に対処しているが、良識によるコントロールであり、チェック機能はヨーロッパほど強くはない
 

従業員を代表する権利を誰に与えるかが問題

 組織内一人親方は組織に所属するので、自分に対する価格に不満があれば上司、あるいは人事部門と交渉することになる。交渉で望みの結果がえられないのであれば、転職するという方法しか対応策を持たない。しかし、一人親方に好ましい生態系を創るということを目的とする21C型人材マネジメントとしては、優秀な一人親方に、簡単に転職という道を選ばれないようにする仕掛けを考えなければならない。
勿論、働く理由は給与だけではないので、給与以外のもので引止めを図ることもできる。しかし、処遇の水準は誰と誰がきめるのかという基本的な問題を取り扱う以上、給与の決定に関することに正面から取り組まなければ、人材マネジメントとしては不完全である。
問題解決のための切り口は、「従業員を代表する権利を誰に与えるか」ついての考察にあると考える。個人が自分で交渉する分には、だれに代表してもらうか、ということは問題にならない。しかし、組合に所属すると自分で交渉はできないので、誰に代表してもらうかは、重要な問題となる。ところが、日本の労働法のおかげで、日本の仕組みは、世界の標準からみると、偏ったものとなっている。次回はこの点に着目して考えてみたい。
 
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「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
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