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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.16  処遇(3)個人が、自分を代表する人を選ぶ

自分で交渉するか、組合にたのむか

 「自分が実力のあるプロフェッショナルであると思えば、自分で交渉するので、労働組合に交渉を頼むようなことはしない。そうでない人は、労働組合に交渉を依頼する」。これが世界の標準である。

通常、プロフェッショナルとは、働く時間の長さで給与をもらう人ではなく、仕事の結果で給与をもらう人のことだ。従って、プロフェッショナルは、時間外手当の対象にならないのが普通である。しかし、誰がプロフェッショナルであるか決めることはかなり難しい。
 アメリカではプロフェッショナルは、労働法の保護の対象外という意味で、エクゼンプトとよばれるが、仕事の難しさを判定し、このレベルより上がプロフェッショナル、と決めるのが普通である。これはジョブ・グレード制という仕組みが開発されて以降のことで、それまでは、誰がプロフェッショナルか企業と組合の間で大いにもめた。米国では、従業員は組合を作る権利も作らない権利もあると考えるので、組合を作るか作らないか選挙で決める。この際、選挙権のある人で投票した人の過半数を獲得する必要があるが、問題は選挙権のある人の範囲である。プロフェッショナルはこの範囲に入らない。それで、どこまでがプロフェッショナルかは紛争の種となった。 

このことが原因で、日本に労働法を導入する際、進歩派のアメリカ人学者によって、マネジャー以外は時間外手当の対象と決められてしまった。従って日本のプロフェッショナルは、多くの場合組合員の範疇に入り、本人の意向に関係なく、組合に交渉を依頼することを選択したことになってしまう。

 

プロフェッショナルの概念の再整理が必要

 プロフェッショナルを労働法の保護の対象外である人、すなわち時間外手当の支給対象にしないとか労働組合に加入する権利を保障しないとする考え方は世界に広くあり、例えばフランスでは、アメリカのエクゼンプトに相当する人はカドーレとよばれやはり時間外手当の対象外である。

 大学を卒業した人までブルーカラーと同じに、働いた時間の長さに応じて賃金を支払う(すなわち、時間外手当も払う)制度は異常である。卒業資格の品質管理が行われていない日本ではやむを得ないという考え方もありえるが、そうであれば、プロフェッショナルの定義を、ポイント・ファクター制度などを使ってハッキリさせる方向に進むべきである。

私がエクゼンプトの考え方について、労働省の沢田陽太郎さん(当時、労働基準局監督課監督官)に説明し、この問題を整理すべきと話したのは、日立の本社で国際人事担当の部長代理をしていた、1980年のことである。それがまだ21世紀に入っても整理できないのでは、日本の国際競争力という視点からは、大いに問題である。日本は安い賃金といった競争力で戦っているのではなく、専門性や独創性といった知的なもので競争しているので、本来的に、働く時間の長さで給与をもらう人ではなく、「仕事の成果で給与をもらう人」を増やさなければならないはずである。

 

自分を代表する人の選択の機会

 組合に加入するかどうかの選択は、処遇に関する交渉を自分で行うか、それと労働組合に委託するかの選択である。従って、極めて重要な選択である。それなのに、ユニオンショップ協定のお陰で自動的に組合に加入してしまい、そもそも自分は組合に入ったのかどうかも定かではない人が多いのが現状である。それでは組合の活動に関心をもてないのは当然である。これは組合にとっても好ましい状態とはいえない
 フランスの場合は組合員になるためには自分で組合費を納めなければならない。組合費の天引きは違法である。アメリカの場合は、組合はいらないと言う選択も含めどの組合が自分を代表するか投票で決める。どちらも自分を代表する権利を誰に与えるか判断する機会が明確に存在する。
 組織内一人親方が主力選手である時代には、少なくとも、組合に入るか入らないかの選択をおこなえる機会を、プロと認められた時点で設けるべきである。組合に入らないと決めた人は自分で雇用者と賃金水準について交渉する。自分にはなじまないと思う人は現行おこなわれている制度とするのである。基本の考え方は「個人別に労働契約を結ぶ」である。
 
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