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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.23  人材開発(2)HRMのステークホルダーと人材開発

ビジネスモデル支援型HRMとステークホルダー

 21C型人材マネジメントは、ビジネスモデル支援型である。ビジネスモデルで闘うためには、数多くの組織内一人親方が必要なので、その目標は、「組織内一人親方に好ましい生態系を創る」になるし、人材開発の目標も「組織内一人親方の育成」になる。そのため、これまで、HRMを構築するとき、経営者やHR部門はどのように考えるべきかを議論してきた。また、契約の一方の当事者である従業員(組織内一人親方あるいはその候補生)は、どうふるまうかを検討してきた。しかし、HRMのステークホルダーは経営者、従業員以外にも存在する。そこで、人材開発という部品の山を考えるにあたって、改めて、ビジネスモデル支援型HRMとステークホルダーの関係について整理してみたい。

 「ステークホルダー」を日本語にすると「利害関係者」とするのが一般的だが、利害関係者と訳した途端に、本来のニュアンスが失われる。ステークホルダーには、その競技の勝ち負けにお金をかけている、といった感じがあり、利害関係者よりは、もうすこし人生がかかった感じである。
そういう感じでみた株主であり、ラインマネジャー、従業員、地域社会である。
その意味で、ここではあえて「ステークホルダー」のままとしたい。
 

ダークサイド、but ビジネスモデル支援型

 HRMのステークホルダーについての考え方は、本コラム「vol.6 概ねの方向を決める手がかり(5)正義の味方かダークサイドか」でのべたようなHRMについての考え方が色濃く反映される。筆者の考え方は、どちらかといえば「正義の味方派」よりは「ダークサイド派」に近く、HRMの対象を限定的に捉えることに賛成である。ただし、限定のしかたが、「ビジネスモデル支援型」である。ビジネスモデルには「お客さんに対する考え方」、「競争戦略」、ビジネスモデルや戦略を実行するための「リーダーシップ」の三要素が関係する。それらと独立的にHRMが存在するとは考えないため、対象を限定的に考えても、従来型のHRMよりも、取り扱う課題の範囲は広い。

例えば、キャリアについての考え方である。正義の味方派の「自分のキャリアについて普段から考えておくことは、会社にとっても従業員にとっても大切なので大いにやるべし」に賛成だが、理由は正しいからではなく、「変革期に採用される戦略の傾向から考えて、自分で自分の運命を決める覚悟がないと、生きにくい」からである。

安定した成長期には、キャリアという問題をあまり深く考えなくとも十分生きていくことは可能であった。従ってキャリア観は、あったほうが良いが、常に必要とまでは言えない。ダークサイドの「へたな手助けをするから、かえってキャリアについての考え方が頑なになり、人生の目的も見つけられない。カウンセリングをすれば会社の業績が向上するという保障もない。悪しき温情主義だ」という意見にある程度賛成なのも、現実的なキャリア選択のために必要な考え方を教えたほうがよい、という意見からすれば、「生き方は自分で見つけるべきで、下手な手助けは有害」だからである。

 

HRMの仕事はステークホルダーに有用な価値の創造

 HRMのステークホルダーには、経営者、ラインマネジャー、従業員といった内部の関係者のほかに、株主、顧客、地域社会といった外部の関係者が存在する。これらの多様な関係者に有用な価値を創造してはじめてHRMは、その役割をはたしたことになるが、あくまでも「ビジネスモデルの範囲内で」である。ビジネスモデルが対象としていない顧客については、直接的には貢献できない。例えば、「顧客に対して誠実である企業が成功する」という実例を示すことにより自分の顧客以外の人にも有用な価値が、広い意味で提供できたとしても、それはHRMとは別な話と考えるべきである。次回は、ステークホルダー別に、HRMがどんな価値を提供できるか考えてみよう。

 

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「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
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