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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.28  人材開発(7)キャリア開発上の分岐点

リーダーシップ・パイプライン

 自分だけでなく他人にも協力してもらって成果を挙げなければならない仕事に就くというキャリア上の分岐点を上手く通過できたとして、次に迎える分岐点は、自分と他人に加えビジネスもマネージしなければならないポストに就くかどうかである。組織内一人親方の区分でいえばレベル3に到達するための分岐点をレベル3の方向に上手に回ることができるかどうかが課題となる。

他人をマネージすることよりは、専門をマネージする方が自分にあっているという選択をした人の場合は、専門分野の未来をマネージしなければいけないポストに就くかどうかがこれに相当する。話を分かりやすくするために、こちらの選択については別途検討することにして、ビジネスをマネージするという分岐点について考えてみよう。

ちなみに、このようなキャリア上の分岐点を上手に通過させることにより、組織に必要なリーダーを連続的に育て、リーダーの供給を切らさないようにしようという仕掛けのことをリーダーシップ・パイプラインという。
私が初めてこの考え方に触れたのは、コロンビア大学のシニア・エクゼクティブ・プログラムで、Ram Charan さんの講義を聴いたときであった。その時は、社内から経営幹部を出すのが普通な日本の企業なら当然やっているようなことと考え、あまり深く考えなかった。
しかし、自律的プロ人材の定義やキャリア開発などについて考えるうちに、リーダーシップ・パイプラインという考え方にひきつけられるようになった。なによりも、「リーダーシップを育てる上で、価値観などを変更する必要があるポイント」という整理の仕方である。
私は、リーダーシップというよりは「キャリア追及上の分岐がおこるところ」で、「ポイントではなく、ゾーン」のようにとらえていることと、次のポイントに向かって送り込む人を「組織の側が選別するだけでなく、従業員の方も自分らしさに照らして次のポイントの方向に進むかどうか判断する場」と考えるなどが異なっている。しかし、「マネージするものは何かという視点から考える」ということでは同様である。
 

レベル2の上級は、複数のマネージャーを部下とするポスト

 他人をマネージする仕事の上級になると、複数の課長をその部下に持つようになる。総務部長として、勤労課長と庶務課長を部下に持つ等のケースがそれである。このレベルになれば、個人としてのアウトプットは、もう求められない。管理職を使って結果を出すことが大事で、そのために課長をコーチしたり、課長に誰を抜擢するかを考えたり、他人を上手にマネージできない人に他のキャリアを選択する機会を与えたりするのが仕事になる。

結果はただ出せばよいのではなく、ビジネス全体に貢献できる結果でなければならず、自分の専門職能領域だけでなくビジネス全体について考える必要が出てくる。ビジネスをマネージする仕事の前段階が既に始まっているといえる。

専門職能としては、部下のほうが詳しい分野も対象領域に含まれてくる。従って、より高い視点で職能として求められていることを考える必要がある。例えば人事勤労分野の仕事は良く知っていても、広報実務には疎いかもしれない。その場合、ビジネスを成功させるために総務部門が果たすべき役割という視点から広報関連の仕事を判断し、部下を指導することになる。
 

ビジネスをマネージするには、リーダーシップが必要

 他人をマネージする仕事からビジネスをマネージする仕事に進むために最も必要なことは、企業競争の性質について理解である。コラムvol.2「概ねの方向を決める手がかり(1)競争の仕方について」で検討したように、現代の競争は、ビジネス・モデルによる競争であるので、お客さんに関する知恵であるマーケティングと、競争に関する知恵である戦略論についての知識や技術を持つことが不可欠になる。

当然のことながら、バランスシートや損益計算書を読む力といった経営に関する基礎知識は、これまでの間に身につけていることが前提になる。しかし、ビジネス・モデルも、実行されなければ意味がない。実行には計画を立てたり、計画実行に必要な人材を集めたりするマネジメント能力のほかに、変化を作り出す能力であるリーダーシップが要求される。
マーケティング、戦略、リーダーシップがビジネスをマネージするために必要な三種の神器なのである。
リーダーシップのウエイトは、他人をマネージする仕事以降次第に高くなるが、組織内一人親方区分のレベル3以上はリーダーシップがいっそう求められることになる。そこで次回は、ビジネスをマネージする仕事をリーダーシップの発揮の仕方に着目しつつ考えてみたい。

 

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「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
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