組織内一人親方レベル2以上になれば、他人をマネージする能力が常に要求される。他人をマネージするとき必要なものは、まず、特定の職能分野に関する高い知識や技能である。部下や上司を説得する時の拠りどころである。さらに、人を指導したり協力を求めたりするためには、他人を共鳴させる能力(自分らしさのうちの社会性といわれる部分)や、利害関係を調整する能力(自律性のうちの関係性管理といわれる部分)が必要になる。
ビジネスをマネージするレベル3以上では、特定分野の知識、技能だけでなく、ビジネスそのものを理解するために戦略論やマーケティング理論についての一通りの知識が求められる。その上で、経理や人事勤労、といったビジネスを実行するうえで必要なスタッフ部門の専門知識を活用し、ビジネスに良い結果をもたらす判断をしなければならない。この能力を、編集能力と呼ぼう。雑誌の編集長は、小説も書かないし写真もとらない。記事も書かないし論文もかかないかもしれない。しかし、人が作ったそれらの作品を評価し、組み合わせ、週刊新潮や週刊文春といった個性ある雑誌を作り上げることができる。ビジネスにも同様な力が必要である。レベル3では専門性は、特定分野の知識、技能からビジネスを総合的に理解する能力や編集能力に次第にウエイトが移っていく。
レベル4になれば、変化をマネージすることが付け加わるが、変化をマネージするためには、変化を創造するための能力であるリーダーシップと複雑な問題を処理するのに必要なマネジメント能力の二つが必要になる。特に、大勢の人たちを動かすときには、リーダーシップの構成要素である、ビジョンやミッションを構築する能力が必要になるので、求められる専門性は、リーダーシップの占めるウエイトが高い経営能力といったものになる。経営者は、職能部門の代表ではなく、経営の専門家でなければ競争には勝ちにくい。
組織内一人親方レベルに対応する専門性の特徴点は、特定分野の知識・技能から編集能力、そして経営能力へと変化する。出発点となる他人をマネージする場合から詳しくみていこう。