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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.31  人材開発(10) 他人をマネージするのに必要な「静かな自信」

組織内一人親方のレベルにより専門性の内容は異なる

 組織内一人親方レベル2以上になれば、他人をマネージする能力が常に要求される。他人をマネージするとき必要なものは、まず、特定の職能分野に関する高い知識や技能である。部下や上司を説得する時の拠りどころである。さらに、人を指導したり協力を求めたりするためには、他人を共鳴させる能力(自分らしさのうちの社会性といわれる部分)や、利害関係を調整する能力(自律性のうちの関係性管理といわれる部分)が必要になる。

ビジネスをマネージするレベル3以上では、特定分野の知識、技能だけでなく、ビジネスそのものを理解するために戦略論やマーケティング理論についての一通りの知識が求められる。その上で、経理や人事勤労、といったビジネスを実行するうえで必要なスタッフ部門の専門知識を活用し、ビジネスに良い結果をもたらす判断をしなければならない。この能力を、編集能力と呼ぼう。雑誌の編集長は、小説も書かないし写真もとらない。記事も書かないし論文もかかないかもしれない。しかし、人が作ったそれらの作品を評価し、組み合わせ、週刊新潮や週刊文春といった個性ある雑誌を作り上げることができる。ビジネスにも同様な力が必要である。レベル3では専門性は、特定分野の知識、技能からビジネスを総合的に理解する能力や編集能力に次第にウエイトが移っていく。

レベル4になれば、変化をマネージすることが付け加わるが、変化をマネージするためには、変化を創造するための能力であるリーダーシップと複雑な問題を処理するのに必要なマネジメント能力の二つが必要になる。特に、大勢の人たちを動かすときには、リーダーシップの構成要素である、ビジョンやミッションを構築する能力が必要になるので、求められる専門性は、リーダーシップの占めるウエイトが高い経営能力といったものになる。経営者は、職能部門の代表ではなく、経営の専門家でなければ競争には勝ちにくい。

組織内一人親方レベルに対応する専門性の特徴点は、特定分野の知識・技能から編集能力、そして経営能力へと変化する。出発点となる他人をマネージする場合から詳しくみていこう。

 

ガラパゴス化の問題点

 日本の情報サービス産業の問題点にガラパゴス化といわれるものがある。ガラパゴス化とは、特定の環境に適合するために独自の進化(もしくは退化?)を遂げていることをいうが、情報サービス産業の場合は、カスタム比率が高くモジュール化が進んでいないとか、仕様を上手に表現できないためアウトソーシングが進んでいないとかが問題点としてあげられる。
しかし、最大の問題は、課長や主任といった人たちが、人を上手に使うことができないという点である。
これは、他人に対する接し方が良く分からないということもあるが原因の多くは、仕事が多忙で人月管理におわれ、自分の専門性を高めることができないことにある。人が使えないのは、(専門性が高くないので)自分に自信がもてないからである。

自分にたいする静かな自信は、このことについては、誰とでもいい勝負ができるという得意分野や得意技をもつことから生まれる。自信を持つためには、やはり何らかの分野での専門性の高さが、どうしても必要なのである。では、専門知識を習得すれば専門性は高まるのであろうか。実はそうではない。専門性は、専門知識を習得するだけでは育たない。

 

好きでないものは上手くならない、自分で考えなければ上達しない

知識や技能を習得しようとする場合必要な条件は、「習得しようと思うことが好き」なことだ。
「好きこそものの上手なれ」という言葉があるが、好きでないことは上手になれない。好きになるためには、習得しようとするものが自分らしさという基準によくあっている必要がある。

一方で、先生のいう通りやテキストに書いてある通りにやれば、上手にできるようになれかというと、初心の場合は別にして、中級以上のレベルになれば、それでは十分ではない。先生もテキストも全てを説明することはできないからだ。
そのため、先生の言う意味はこういうことかと自分で試してみたり、テキストに書いてない条件の場合はどうなるかなど、自分で考えてみたりしなければ上手にはならない。専門性を高めるためには、自分らしさについての理解と自分で行動できる自律性の二つが必要なのである。

 それ故、静かな自信は、専門性が高いことと、その分野の仕事が自分に合っているという感覚と、その二つがあるので自分で判断できると思う、というところから生まれる。

ではどうすれば、自分らしさや自律性は育てることが出来るのだろうか。次回はこの点について考えてみよう。

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「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
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