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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.33  人材開発(12)ビジネスをマネージする技術としてのチームビルディング I

ビジネスをマネージするのに必要な能力

 ビジネスをマネージするためには、リーダーシップが必要であるとコラムVOL.29で書いた。ビジネス・モデルや戦略は考えただけでは意味がなく、実行しなければ価値を生まないからだ。ものごとを実行しようとするとリーダーシップが必要になる。一方、ビジネスをマネージするには、特定分野の専門知識だけでなく、ビジネスに良い結果をもたらすよう種々な判断をする能力(本稿では編集能力と呼ぶ)が求められるとも書いた(VOL.31)。レベル3では、専門性の中身が、特定分野の専門知識からビジネス全体に関するものに移っていくと言いたいのだが、この時必要な能力がもう一つある。チームビルディング能力である。

ビジネスをマネージするとは、端的に言えば、種々な施策を実行し、ビジネス・モデルを成功に導くことで、そのためには競争に勝たなければならない。現代のビジネス上の競争は、個人対個人の競争ではなく、組織と組織の競争という色彩が濃厚である。そのため勝つためには、チームワーク効果を梃子に使って、メンバーの一人ひとりの能力の合計以上の力を引き出したり、勝っても負けても一試合ごとに強くなるチームを作ったり、しなければならない。
 

チームビルディングは、リーダーシップとマネジメントの複合技術

 リーダーシップを、「物事を変えるときに必要な能力」と捉えると、チームビルディングもリーダーシップを構成する能力の一部ということになる。正確には、「場面、場面で発揮するリーダーシップの種類を選択する技術であり、先頭に立って発揮するリーダーシップとは異なる種類のリーダーシップを主として使う技術」である。しかしこの技術は、計画を立てたり、進度管理をしたりといった、いわゆる複雑な問題に対処する時必要なマネジメント能力も要求する複合技術である。大きな絵を描くことや、ビジョンやミッションを熱く語るリーダーシップと区別し、ビジネスをマネージするのに必要な第3の能力ということにしよう。

ビジネス・リーダーの育成に、「チームビルディング」が必要な理由

 チームビルディングの技術は、自分と他人をマネージすることが要求される、組織内一人親方度のレベル2あたりから少しずつ必要になる。しかし、ビジネスをマネージするとなると、その必要度合いは倍加する。理由は、リーダーが答えを持っているとは限らない課題に取り組まなければならないからである。解決には複数の専門家の知恵が必要で、解決案の実行にはいろいろな部署の協力が予想され、利害関係者を納得させる必要も発生すると思われるような課題である。

このような課題に取り組むとき、まず課題が正しいかを議論しなければならない。例えば、売れない商品を何とかしようとする場合、売れない理由が何なのかを究明しなければならない。売れない理由がデザインであれば、コスト低減努力は実を結ばない。従って、「売れないので値段を下げたい。コストを10%下げることを考えてくれ」という課題を与えられた場合、値段をさげれば本当に売れるのかを検討してみる必要が出てくる。販売する人の意見、使う人の意見、競争相手の動向など多くの専門家の考えを聴いてみる必要がある。ライフサイクルの終盤に近い製品であれば、次の製品の開発に注力する方が効率的である。製品のロードマップはどうなっているかもチェックしなければならない。検討の結果、自分で製造するのは中止し外部に発注するという結論になるのであれば、工場の作業量に影響が出てくるので、この対策も考えなければならない。

問題の解決策を考えるときに、同時に問題そのものが正しいかについて考えることを、ダブルループ・クエスチョンというが、要は、ビジネスをマネージしようとすると、問題の正しさをも検討しなければならないような複雑な問題が増えてくるため、専門家を集めチームを作って問題に取り組まざるを得ない場合が増えてくるのである。ビジネス・リーダーの人材開発プログラムに、チームビルディングの技術を教えるコースが必要な理由である。
 

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