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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.34  人材開発(13)ビジネスをマネージする技術としてのチームビルディング II

目標を共有化できるようにするのが、リーダーの仕事

 問題の正しさの検証が必要になるような複雑な問題を解決しようとする場合、リーダーは答えを持っていない。薄々、こちらの方向ではないかとは思っているかもしれないが、確信はない。そこで専門家に集まってもらうのだ。こういう場合、リーダーの仕事は「チームのメンバーから意見を十分に引き出すこと」になる。

異なる意見が火花をちらし、お互いが刺激しあって、新たな切り口や考え方が生まれるような場を創らなければ、良い解決案は生まれない。だが、どうしたら、そのような雰囲気を持った場を創ることが出来るのだろうか?

答えは、「目標の共有化」である。ところが、この言葉は、いろいろな場面でよく使われる割には、どうしたら実現可能なのかについては語られることが少ない。目標の共通化を可能にするためには、どうしてチームをつくったのか、という出発点に戻って考えなければならない。
 

現状に対する不満、変えた後の展望、変える手順

 そもそもチームを編成したのは、既存の組織だけでは解決が難しそうな何か不満な状況があり、その解決には多数の専門家が必要と考えられたからである。1)不満な状況を解決し2)より望ましい状況にしたいのだが、3)その方法については分かっていないのである。
1)を不満、2)を展望、3)をプロセスとよぶことにしよう。

リーダーがまずしなければならないことは、1)を十分に説明することである。「今のままでは何故困るのか」、「そのままにしていると、どんな困ることがさらに起こるのか」である。この仕事は思う以上に難しい。メンバーの多くは、「不満な現状は分かるとしても、自分が作り出したものではない。何故自分が解決にあたらなければならないのか」とか、「問題ではあっても、自分の身には困ることは降りかかってこない」とか考えているからである。現状の問題点についての議論を始めると、問題がおきた理由について検討せざるをえないが、議論が責任追及の方向に走りすぎると、チームは迷走する。
船底に水が入ってきているのに、責任ばかり議論していると、船は沈んでしまう。リーダーは、何故困るのか、放置するとどんな問題がそれぞれの身に降りかかるかを具体的に示されなければならない。

 

変えた後は、どのような姿になるか

 現状に対する不満は共有化できたとしよう。だがそれだけでは十分ではない。問題を解決した後の姿がどんな形になるかについて合意がないと、物事は進まない。現状を変えた後の姿が、特定の人にだけ望ましいものであったり、嬉しさがそれほどでもなかったりすると、みんなが目標に向かって努力する気にはなれないからだ。

「この問題を解決すれば、画期的な製品が生まれ、業界でトップシェアが確保でき、その結果ボーナスも増えるだけでなく、省エネが実現でき社会的評価も高まる」というようであれば、「ではがんばろうか」ということになる。リーダーは問題を解決したあと、どんな良いことが起こるかについて一生懸命説明する必要がある。目標には、「達成出来たらいいなぁ」というわくわく観が伴わなければならない。

 

もしかすると達成できるかもしれないと信じられる目標

 現状に対する不満、現状を変えた後の展望の二つを上手く説明できたとしても、目標の共有化に成功したわけではない。県立高校の硬式野球部の監督が、甲子園大会に出場という目標を掲げたとしても、「とてもそんなことは、俺たちには無理さ」と選手が考えるのであれば目標とはなりえないのだ。だが、三回戦突破を目標に練習した結果、負けはしたけれど私立の有力校に良い試合が出来た、となると話は違ってくる。もしかすると、可能かもしれないという望みがうまれてくるからだ。

要は、達成の可能性が重要なのである。その意味では、初めから信じられる目標でなくてもよい。とても達成できそうにないような目標であっても、次第に達成が可能と信じられるようになればよい。リーダーは、どのような中間目標が達成できると、皆が「もしかして」と信じられるようになるかを深く考える必要がある。

目標の共有化には、不満の説明(何が問題か、なにもしないとどんな困ることがおこるのか)、展望の説明(変えた後の姿はどのようになるか、そのように変わると何が嬉しいか)上手な目標の設定(もしかしたら達成できるのではないか、達成できると素晴らしい、と思えるものにする)の三つの要因が不可欠なのだ。変える方法や手順は、目標の共有化ができたあと、チームのメンバーみんなで考えることである。

 

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