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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.38  グローバルな競争と人材開発(2)垂直統合方式の修正

熟練労働力の不足対策とコスト削減策

垂直統合方式を維持したまま世界と競争しようとすると、どうしても必要なことは摺り合わせ型の仕事ができる熟練労働力の確保とコストの削減である。そのための対策は
1)海外から安い部品・材料を購入する
2)人件費の安い海外で生産する
3)中核でない業務をアウトソーシングする
の三つである。いずれも過去の円高期に対策として実行されたものだが、グローバルな競争は、上記対策の一層の進化を要求しているといえる。以下個別に内容を検討してみよう。

 

国際調達

 海外から部品や材料を調達する場合、日本国内で資材を調達する場合と異なり、取引の条件を明確に文書にすることが必要になる。購入する部品や材料の仕様を文書化することに加え、取引の内容を契約書の形にまとめなければならない。この二つの作業に不備があると、思わぬ損害を受けることになるのだが、契約社会ではない日本は、この作業が得意ではない。

例えば、社内の設計部門と製造部門の間で取り交わされる図面や仕様書は、お互い製品を良く知った人同士なので、細かいことは記載されていない。しかし、外部に発注するとなると、例えば、寸法だけでなく作業方法の指示や、どのような検査方法で納入品の合否を判定するかなど細部まで規定しておかなければならない。

一方それを英文の契約書に落とし込もうとすると、損害賠償に関する法律知識や輸出入に関する知識が不可欠になる。契約ができたら終わりではなく、品質管理のための指導や、納期管理のための作業の進行状況のチェックなども求められる。要は、国際調達は、製品や契約などに関する知識と交渉力などを含むスキルが必要な専門分野である。従って、海外から安い部品・材料を購入することによってコストを削減しようと思えば、国際調達ができる人材の育成に、特別の配慮を払わなければならない。

 

海外生産

 海外に工場を移転させる理由は時代と共に変化してきた。貿易摩擦を回避するために「ここで売るならここで作れ」とうい要求にこたえて工場を建設した時代、「市場に近いところで生産」する方が需要動向に素早く対応できると考えた時代などを経て、現在は自分の特徴点から考えて、「どこで、何を作るかを選択」する時代に移ってきた。

海外生産の理由はどうであれ、日本で生産しても海外で生産してもそれは垂直統合システムの一部なので、多くの場合、製品の棲み分けがおこなわれた。家電や半導体、コンピューターといった産業の経験を振りかえりながら、日本の海外事業の発展段階を振り返ってみよう。

 

海外事業の発展段階

日本の海外とのビジネスは、

1)フェーズ1:製品を日本から輸出する。

2)フェーズ2(前期):輸出を代替する形での現地生産する。

3)フェーズ2(後期):現地生産が本格化し、進出先のニーズにあった製品の開発(マイナーチェンジ)も現地でおこなう。高級品は日本から輸出する。

4)フェーズ3:現地法人から、持ち帰りとよばれる日本への輸出および近隣諸国への輸出もはじまる。汎用品の生産は全て海外に移管される。

5)フェーズ4:日本向けの高級品も生産する。現地向けの製品は、日本製のもののマイナーチェンジではなく、日本向けとは異なるものとして、現地スタッフが一から設計開発したものを生産する。日本の工場は開発センター化する。

という順序で発展してきた。

当然のことながら、海外事業の発展段階によって工場に期待される仕事の中身は異なるし、発生する問題も異なってくる。従って、必要とされる人材も異なってくる。次回は、上記発展段階を組織や機能の内容も加えて分析、現在はどのように変化してきているかを見ながら、発展段階ごとに必要な人材について検討してみよう。
 

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