ホーム  
3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.39  グローバルな競争と人材開発(3)海外事業の発展段階と人材 I
 日本の海外ビジネスの発展段階を、家電、半導体、コンピューター(ハード)の経験をベースにモデル化すると以下のようになる。
垂直統合方式が修正を迫られているのと同様、グローバル化の進展により、現在ではこのモデルとは異なるステップで海外事業を進めるケースも多くなっているが、「海外事業の発展段階により必要な人材は異なり、育成のための方策も異なってくる」という過去の経験は、グローバル人材の育成を考える上で十分有用である。経験モデルを整理した上で、どのように活用するか考えていくことにしよう。

 

フェーズ1

 日本の海外オペレーションは輸出から始まった。このフェーズでは、事業形態が輸出中心であり、組織は海外では駐在事務所、販売子会社という形態、国内では営業部門に輸出営業所といった専門部隊ができる段階。この時代に必要な人材は、現地の言葉が出来、現地の事情が良く分かる営業マンであり、販売会社の経営が出来る人である。

現在の問題点は、このフェーズを通過することなく現地進出がもとめられることがあることだ。外注先や部品メーカーが「取引先にうながされて」、「日本の人件費では太刀打ちできないので」、といったケースがそれである。いきなりフェーズ2からスタートすることになるので、人材不足は避けがたい。
 

フェーズ2(前期)

 輸出量が一定のボリュームを越えると、日本から輸出するより現地で組み立てる方が、人件費も安いし運送費も軽減できるということで、現地生産が選択される。初期の段階では、現地に良い部品・材料メーカーがいないため、部品や材料は日本から送られた。

現在は、部品・材料メーカーの海外進出も進んだので、このフェーズを経ずに、フェーズ2(後期)からスタートする会社もでてくる。この段階では海外販売子会社が世界中に10社程度になっているが海外製造子会社は5社未満といった水準。国内では、海外営業所から国際事業部などの事業部門への格上げが進み、製品別事業部や工場に海外子会社を管理する部署が生まれる。(例、家電事業部国際部など)

 このフェーズの問題点は、新会社設立能力で、人の採用、処遇制度や経理システムの設計、現地人材の育成などなど、会社を立ち上げるのに必要な人材の不足である。そのため、管理部門を含め海外要員の育成が大きな課題となる。先行した子会社では、いわゆる中小企業問題が発生する。会社が大きくなると共に、いろいろなスタッフをそろえたり本格的な管理制度を整備したりすることが必要になる。
 

フェーズ2(後期)

現地生産が本格化するステージ。海外進出の理由は、安い人件費から貿易摩擦の回避や市場の確保にウエイトが移る。そのため、進出先のニーズに合わせ製品をマイナーチェンジする設計部門をもつようになる。部品の現地調達も進む。一般的には、汎用品は海外で生産、高級品は日本から輸出という棲み分けがおこなわれる。

組織的な特徴は海外では、複数の国をテリトリーに持つ販売子会社が出てくる。国内では事業部、工場に内外の生産量、機種などを調整する部署、海外子会社の品質管理、生産管理を支援する部隊が出来てくる。

この段階の問題点は、後発グループ(含む、フェーズ2前期を経ずいきなり市場確保の目的で進出した企業)では新会社設立問題、先発企業では、育てた人材の退職、労働組合問題など、いわゆる中小企業のレベルを卒業し中堅企業となった企業がぶつかる問題の解決を迫られる。国内のことしか経験していないので、海外からの支援要求の背景が十分理解できず反応が遅いため種々のトラブルが発生するので、内なる国際化問題が緊急の課題になってくる。

問題の複雑化に伴い必要な人材の要求レベルは高くなる。「若いときに担当者として海外で仕事をした経験があり、国内でマネジャーをした後、再び海外勤務となった」といった人材が求められる。内なる国際化対策として、海外業務研修生といったトレーニーの数を増やすだけでなく、管理職対象の国際化教育プログラムを導入する必要が高まる。

  フェーズ2までは、どちらかというと日本国内に与える影響は深刻ではない。しかしフェーズ3以降になると、海外事業の発展段階が進んだことにより、国内の事業がいろいろな影響を受けるようになってくる。その点の検討は次回。

 

前のコラムへ バックナンバー一覧 次のコラムへ

「21世紀型人材マネジメント―組織内一人親方に好ましい生態系の創り方―」をテーマに、これからも関島康雄のコラムを掲載していきますのでご期待ください。また、このコラムに関するご意見・ご感想もお待ちしております。
※ご意見・ご感想はメールにてお寄せください。メールアドレスは連絡先のページを参照願います。

Copyright since 2006  3DLearningAssociates All Rights Reserved.