三番目に必要なのは、企業の運営の仕方についての常識である。世界中でビジネスをする以上、方法はいろいろあるとしても、予算管理や意思決定のプロセスで「当然このような仕掛けは、なくてはならない」といった常識がないと仕事がぎくしゃくする。大企業ならどの会社もやっているようなプロセスであっても、「日本企業だからこんな面倒なことをしている」とか、「日本側でなんでも決定する」とかいう誤解を生んでしまうからだ。(これを私は、because Japanese company syndrome と呼んでいる。中小企業時代に採用された人や、技術者のなかには、このような企業の運営に関する常識が不足する人もいるので、グローバル化プログラム レベル2でカバーする必要がある)例えば、前回のコラムvol.48で触れた、費用負担についての考え方である。
地域本社の費用は
1)地域本社が持つ事業部門に割りかけとして配布され、ビジネスを通して地域本社内で回収される
2)親会社から委託された業務をおこなう対価として親会社に請求する
3)現地子会社に対しサービスを提供する場合は、一件ごとに費用を請求する
などいろいろあり、これらの組み合わせにより地域本社は運営されているのが普通である。
こういう事情を理解せずに、「地域本社として指導する」という態度で仕事をおこなえば、自律的に行動したいと思っている現地子会社や事業部門の反発を招いてしまう。「地域本社が介入しすぎる」、「サービスにくらべ費用が高すぎる」、といった感情が存在するからだ。地域本社の人材には、「複数の子会社あるいは多くの事業部門を持つ会社で働いた経験」が求められる理由である。
キャリアのうえで誇れるテーマが必要
外部人材の活用のためには、高度専門職の採用が可能な処遇制度を整備する必要がある。当然、給与その他、従来からいる人とのバランスが問題になる。ストック・オプションやLong Term Incentive Plan といったものが必要になる。しかし、なによりも大切なのは、面白い仕事のテーマである。親会社の方針を理解したうえで地域戦略の立案と実行に専門知識を振るってもらうのが外部から人を採用するねらいである以上、これは面白そうだと感じられるテーマ が用意されなければならない。