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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.50  グローバルな競争と人材開発(14)
フェーズ3の課題 III 外・外コミュニケーション

地域本社と国別の子会社のコンフリクト

  海外事業の問題点というと日本人と外国人のコミュニケーションが取り上げられることが多い。しかし、同じ問題はドイツ人とイギリス人、タイ人とフィリピン人の間にも存在する。地域本社が出来て、地域内に存在する子会社間の利害の調整をしようとすると、この問題が大きくなってくる。

例えば、地域本社が、ある製品を拡販したいと考えても、国別の子会社がそうしたいと考えるとは限らない。それぞれの会社に所属する人は、それぞれの会社の業績で評価されるので、先ず自社の業績が第一と考える傾向が強いからである。
  子会社のトップが皆日本人である場合でも、この種のコンフリクトは常に存在する。しかし、日本の本社とのコミュニケーションを通して、全社に共通する課題は理解していることが多いので、調整は難しくはない。

ところが、現地人幹部が増え、トップも日本人でない人が多くなると、販売戦略などの調整はにわかに難しくなる。子会社での勤続年数が長い現地人幹部のなかには、地域本社との折衝ではなく日本の本社と直接コミュニケーションをとって自分の意見を通そうとする人もでてくる。このときの日本側の対応により問題が難しくなってしまうケースもしばしばである。

 

内・外よりは外・外が容易という誤解

  日本の海外に対する認識は、日本と外国という2区分になることが多いので、外国という範疇にどこの国も入れられてしまいがちである。そのため、日本人と外国人のコミュニケーション問題(内・外)はクローズアップされるが、外国人間のコミュニケーション問題(外・外)はあまり注目をあびない。

海外事業がフェーズ3レベルに到達するまでは、この問題が発生する機会が少なかったという実態も、この問題が重視されない理由の一つである。
だが、多国籍な環境で一つのテーマをグループ別に討議して発表する、という研修の機会を作ってみれば、すぐ分かることなのだが、発表者は英語を母国語とする人であることが圧倒的に多くなる。共通言語として英語が使われるためだ。このため議論はどうしても発表者の意見に引きずられてしまう。
  私が日本からオブザーバーとして参加した欧州の会議で、どうも各人から個別に聞いていた話と違う結論になったので、会議終了後の懇親の席で、ドイツ会社の人事部長に「どうなったの」と尋ねたところ、英語に堪能な彼が「いやぁ、難しい話になると、こっちはドイツ語で考えて、それを英語にして発言しようとする。ところがその間に議論が先に進んでいて発言の機会を逸してしまう。ピーター(彼となかのよいイギリス人で地域本社の人事部長)にしてやられた」と、なにやら日本人がいつも経験するようなことを言っていたのを思い出す。
 

解決策は、多国籍環境下での意思決定を経験させる

  この問題の解決策は、英語を母国語にする人にほかの言葉で議論する機会をつくるのが一番よいのだが、そういうチャンスは作りにくい。次善の策は、異文化コミュニケーション教育の導入や海外勤務、多国籍環境での意思決定などだが、詳しくは以後、グローバル化プログラム レベル2で説明する。

  要は、グローバル化教育は日本人にだけ必要なのではなく、どこの国の出身者であろうと必要ということである。日本人を海外にトレーニーとして出すのと同様、海外の子会社からプロフェッショナル・レベルをトレーニーとして日本に1年間派遣、出向者として3年ほど日本で勤務をする、などの制度も当然、導入しなければならない。
 
 

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