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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.60  組織(6)組織設計上の留意点IIII 縦の繋がり

階層も、分ければ離れる、分ければ固まる

  これまで、組織を分けることによりおこる現象を、情報の流れ、仕事の相互依存性、通常の意思決定プロセス、専門性といった視点から議論してきた。テーマは主として、区分された組織間の「横のつながり」に関係するものであった。

しかし、組織設計は、設計、製造、検査、あるいは人事、総務、会計、経理、といった職能区分(横の分業)をどうするかを考えるだけでは完了しない。組織図で示されるような部・課・係といった構造(縦の分業)を考慮しなければならない。縦の繋がりも横の繋がりと同じ現象を生じる。
すなわち階層が異なると情報は分断される。課長が持っている情報は選択されて部長に報告され、全てが報告されるわけではない。分ければ離れるのだ。

 

What とHow の階層構造

  一方、区分することにより専門性は高まる。考える仕事を(1)what何をするか、(2)howどのように実行するか、の二つに区分すると、部長は主として課題を解決するためにwhat を考え、課長は部長の指示をどうしたら実行できるかhow を主として考えることになる。そしてhow を実現するためには部下に何を指示したらよいかwhat を考える。このようにwhat とhow は繰り返されるのだが、階層が下がるにしたがって幅は狭くなるが専門性は高くなる。

  賃上げ交渉の例をとれば、部長が、今回の春闘では経済情勢、会社の支払能力からいってこのあたりの水準にしたい、そのためには、どういう手順で相場観を創っていくか手がかりを得たいと考えた。そこで、「ベースアップなし定昇のみ」など、いくつかケース別の数字をつくるように労務課長に命じたとしよう。課長はそのためには、賃上げに関する総費用を把握しなければならないと考え、
(1)人員を、採用は昨年並み、減員は自然減だけとした場合
(2)昨年の半分採用、自然減
(3)採用ゼロ、希望退職100人実施
という3ケースを作成すべきと考え部下に指示。部下はそれぞれのケースが退職金、年金にはどのように影響するか、採用数変更の影響はどのようなものがあるかを知るために動き出したとする。

この場合部長は、課長ほど賃金改定にともなう総費用の計算プロセスに詳しくなくともかまわない。課長は昇給の結果が退職金や年金に跳ね返る度合を計算するプロセスや採用人員決定プロセスに詳しくなくても仕事はできる。だがそれぞれの担当者は、年金や部門別の人員充足状況に詳しくなければ課長の要求に答えることはできない。

  一方で部長は、課長より自社及び同業他社の経営状況について詳しい情報を有しており、業界の相場決定の上で自社の影響力はどの程度かも把握している。要は、階層により専門性の中身は異なるが、区分することにより専門性は高まるという原則は横の繋がりの場合と同様である。
 

副部長・担当部長制の運用が難しい理由

  組織に関し、よく問題になるのは、副部長、担当部長(以下副部長で代表)の位置づけである。なぜそのようなポストを設けるのかというと、通常は管理スパーンの問題と捉えられる。一人の部長でカバーするには仕事の範囲が広すぎるが、別な部として独立させるほどには仕事量がないというケースだ。だが実際は、ポストが不足して適齢期の人材を処遇できないといった理由から副部長職を設ける場合も多い。副部長が組織運営を難しくする理由は、横と縦の両方にからむ問題だからである。副部長を作ったことにより横の区分がひとつ増える。同時に、縦の区分もひとつ増える。

  運用上は横と縦のどちらかを増えないようにする以外、情報の流れや意思決定の複雑性は解消しない。例えば、副部長の担当範囲に関しては、部下は部長に報告する必要はない(横の関係の省略、副部長が結果を部長に報告)、担当範囲以外のことは副部長に報告する必要はない(縦の関係の省略、部長が副部長に伝達)などといった原則を決める必要がある。

効率よく運用するためには、部長と副部長のそれぞれが、お互いの役割をよく理解していなければならないし、部下も両者の関係を配慮しつつ相談したり報告したり出来なければならない。

  難しいポストなので組織論の上からは、作ることはお勧めできない。組織の効率を優先し、人材の処遇は別な方法を考えるべきなのである。

 
 

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