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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.66  組織(12)組織と戦略V 活用・探索の二兎を追う方法

いいとこ取りは難しい

  活用型と探索型、両方の良い点だけを取り入れた組織というのは理想形だが、それは極めて達成困難である。なぜなら両者の特徴はコラムvol64vol65で検討したように、対極的であるからだ。活用型に必要なのはきっちりした密度の高い組織、一方探索型は、ゆるい結合で自由度の高い組織といった具合だ。

また、活用型から探索型へ、あるいは探索型から活用型への切り替えという作業も簡単ではない。組織構造は変えられても、ルーティンや企業文化の変更には時間がかかるからだ。では、どうすればよいか。対策はいくつか考えられる。

 

多様性の受け入れ

   活用型に必要な人材は、求められた役割をチームの一員としてきっちりこなすだけでなく、業務の改善にも黙々ととりくむといったタイプだが、探索型には、好奇心が旺盛であちこちに手を出し、理想を求めて夢見るタイプが必要である。そこで、組織内に多様な人材を受け入れることができるよう工夫するという対策が考えられる。
しかし、ベンチャー企業は別にして、通常の企業は活用型で運営されているので、風来坊のような人材はあまり歓迎されず、どう評価するかという仕掛けも未成熟な場合が多く、多様性の受け入れはキャッチフレーズとしてはポピュラーだが、実質はなかなか伴わない。「多様性、diversity」が必要という意見は良くきかれるが、女性の活用や外国人従業員の採用といった意味合いで使われることが多く、競争優位性の観点とはだいぶ異なる。
 

組織を分ける

  一番すっきりしているのは、R(routine)とC(culture)が異なるのだからA(architecture)も別にしてしまおうという方法である。例えば、研究所は探索型、事業部門は活用型とするというのがそれだ。

  この方法の問題点は、研究部門が見つけたことが事業部門で活用されないケースがしばしば起こることだ。ゼロックスとパラアルト研究所の事例が有名だが、「分ければ離れる」という組織の原理からすると起こって当然のことである。ルーティンや文化が異なる上に組織まで別建てとなれば、コミュニケーションは一層難しい。従って、すっきりした対応策だが、運用には組織の壁を超える種々な対応策が必要となる。

 

即応戦略

  関島が考える現実性の高い対応策は、軍事理論でいう即応戦略に近い考え方でreadiness(準備が整っていて迅速に対応できること)を重視するという方法である。この方法が上手く機能するには、

(1)組織全体としては優位性活用型で運用しているが、戦略に対するスタンスは、撃て、狙え型、
(2)遠くの旗はドメイン明示でヒント型(道に迷った時は、この籏をみて進むべき方向を定める、登る山を探すときの手掛かりを提供するという二つの目的にフィットするビジョンを持つ)、
(3)市場、競争相手の状況、内部リソースに関する情報を多く持つミドルに戦略立案能力があり、ミドルの提案を受け入れる度量を持つトップがいる、

という三つの条件が揃う必要がある。

  活用、探索の二兎を追う方法をまとめて言えば、「活用型をベースにするがいざという時探索を素早くできる体制を普段から整えておく」ということになる。
ARCについてそれぞれ具体的にどうするかは、次回検討しよう。

 

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