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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.77  HRM戦略(9)手掛かりIII 具体的戦略目標は、組織内一人親方に合う文化の構築 I

具体的戦略目標

  HRM戦略の最上位の目標が、「グローバルな競争相手と闘って優秀な人材を獲得・確保する」、中位の目標が「組織内一人親方の獲得・確保」と「先頭に立たないリーダーの育成」であり、戦略の成功・失敗の判定基準が「それぞれの数」であるとすると、具体的な戦略目標の一つは、組織内一人親方が好ましい、住みたいと思う生態系の構築ということになる。

ということは、HRMを構成する部品、すなわち組織や人材の特定の仕方、処遇制度などを組織内一人親方にフィットするものに設計しなおすという作業になるが、その際、競争に勝つため戦略上要求される条件があり、それは「二兎を追うことを許容する文化」であった。ところで、この二兎を追う文化は、組織内一人親方に合う文化なのだろうか。

 

二兎を同時に追いかける場合と、どちらかを選択する場合

  組織については、競争優位性の活用型と探索型の共存がグローバル時代の要請だが、これは個人の側からみれば、どちらの組織が自分らしさと合っているかという選択の問題。活用型組は、組織構造がしっかりしていて指揮命令系統がはっきりしていることが求められるが、そういうところで頑張るのが好きか、それとも探索型のやや緩やかな組織構造のところで自由に活動できるが、アウトプットも個人別に厳しく評価されるところが好きかである。ある意味で職種の選択でもある。(例えば研究型は後者)

  グローバルな価値観とローカルな価値観という二兎は、両方とも対応可能が一人親方の条件(そうでなければグローバル競争時代にはプロとしてやっていけない)。家庭生活と会社生活も同様。両方上手くやれて当然(ウォートンのステュワート教授によれば、2つではなく仕事、家庭、コミュニティ社会、自分自身の4つの領域。コーヒーブレーク 第12回ウォートン リーダーシップコンフェレンス参加報告II 参照)。

  処遇制度などは組織と対等な立場で労働条件として交渉するので内容を正確に提示さえしてくれれば問題にならない(仕事の内容が、やりたいことと一致するかどうかが組織内一人親方にとっては最大のテーマ)。こうしてみると、二兎を追う文化は十分受け入れ可能に思われるが、仕事の仕方についての好き嫌いが文化だとすると、「仕事の仕方」についてはもう少し考えてみる必要がある。仕事のしかたと文化は強く結びついているからだ。

 

プロセス重視と柔軟性重視

  仕事の仕方を大きく分類すると、プロセスを重視するケースと柔軟性を重視するケースに分かれる。大企業は前者、中小企業は後者が多いと言えるが仕事の内容からいうと、プロセスを重視しないと大きな問題の発生を避けられず、目的の達成が難しいものと、柔軟性を重視しないと問題の解決が難しく目的の達成が困難なものに区分される。

例えば空軍のパイロットや海軍の原子力潜水艦の艦長の仕事を考えてみよう。複雑で精密かつ高価な装置を扱うので、安全に関するプロセスをまもらず不注意で事故を起こした場合、その被害は甚大であり、業務目標の達成が困難である。(アメリカの航空母艦フォレスタルの艦載機のロケット弾が、事故により発射され、大惨事を引き起こしたケースが有名)このため、空軍や海軍では、仕事の仕方はプロセス重視型が好ましい。

  海兵隊や陸軍では、戦略的な意図や目標達成の手段は大枠与えられるが、状況により現場が柔軟に判断し創意工夫しなければ、戦闘に勝つことはできないため、実行は現場の指揮官の裁量に任せるケースが多い。柔軟性重視が好ましい仕事のやり方である。

  国の安全を守るという視点からすると仕事の仕方についてプロセス重視と柔軟性重視の二兎が必要になるということになるが、これは企業が競争優位性の活用型組織と探索型組織の両方を持つ必要があるのと同様で、個人の立場から見れば職種の選択に帰着する。自分らしさにあった方を選ぶということが大切になる。

 

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