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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.81  リーダーシップ開発(2) リーダーシップとは何か

誤解の源泉

  リーダーシップというコンセプトは、複雑な顔を持っている。試に、次の文章が正しいか誤っているかを判定してみて欲しい。

  1. リーダーシップは偉い人だけに必要なもので、普通の人には必要がない。
  2. リーダーに向いた人は、生まれつきそのような才能に恵まれている
  3. リーダーにはカリスマ性が必要
  4. リーダーは人格者でなければならない
  5. リーダーは明るく、なにごとにもポジティブであるべき

正解は「すべて誤っている」である。しかし一般的には、3,4,5については、正しいという回答の比率が高い。これは、「リーダーすなわち先頭に立つ人」というイメージが強くあるためだ。 しかし、リーダーシップは、いわゆるリーダーと目される人だけに必要なものではない。たとえば子育てをするお母さんにも必要である。

  一方で、リーダーシップとはこういうものだという、はっきりした意見を持つ人もいる。いわゆる偉い人や成功した人が自分の経験から導いた考え方で、間違ってはいないがリーダーシップの一面をとらえたものであることが多い。

上記の二つが、リーダーシップについての誤解を生む主な理由である。本当のところは、リーダーシップは、いろいろなタイプがあるだけでなく、発揮する場面や発揮するさいの環境なども影響する、複雑なコンセプトなのである。

 

軍事知識の不足が日本のハンディキャップ

  リーダーシップについての理解が不十分なのと、経営戦略についての理解が不十分なのには共通の理由がある。それは、軍事についての知識の不足である。戦略とはそもそも戦争に関する理論からうまれた。その考え方が、競争相手に勝つための方法として、経営戦略論に影響をあたえた。それ故、軍事に関する知識があると経営戦略理論も理解しやすいのだが、日本では軍事に関する知識は学校でほとんど教えない。

  リーダーシップも同様で、戦争では危険を冒して目的を達成しなければならないので、どうしても軍隊の指揮官はリーダーシップが必要になる。考えれば当然のことなのだが、死ぬような危険を冒さなければいけない任務を、権力や命令だけで部下に実行させられるはずはない。目的や手段、成功した場合の効果など詳しい説明、指揮官に対する信頼感など、リーダーシップを構成する各要素が作戦の実行には不可欠なのだ。それゆえ、軍隊にはリーダーシップについてのノウハウが蓄積されている。戦争の経験をとおして守る時と責める時では必要なリーダーシップは異なることや、勝っている時と負けている時でもリーダーシップの発揮の仕方は異なること等を発見していて、それは軍人を育成するためのテキストに反映されている。

例えば、「アメリカ陸軍リーダーシップマニュアル」はとても良いリーダーシップの教科書であるし、日本海軍の「次室士官心得」は、現代にも通用するところが多い。しかし、戦争は悪いことという意味で、軍事に関する知識は遠ざけられたので、これらの知識は日本では利用されていない。学校では過度の平等主義のもと競争は忌避され、リーダーの在り方やリーダーシップについては教えられない。

  軍事に関する知識の不足は、競争に勝つうえで日本のハンディキャップになっている。

 

どういう時に必要か

  このコラムではこれまで、リーダーシップとは、「何かを変えるときに必要なもの」と定義してきたが、どうしてそのような結論に至ったのかについては十分には説明してこなかった。そこで、21C型HRMとリーダーシップの関係を考えるさい、この点を明らかにしていきた。

  リーダーシップとは何かを考える際、「どういう時に必要なものなのか」から考える方が全体像を掴みやすい。なぜなら、だれでもリーダーシップを発揮した経験、すなわち選択したり、決めたり、変えたりした経験は持っているからだ。その経験とこれから説明する理論を照らし合わせれば、リーダーシップという複雑で多面的なコンセプトは、次第に把握できるはずである。

  コラムvol.80では、リーダーシップが必要なのは、環境変化に対応するとき、戦略を実行するとき、キャリアを形成するときと、リーダーが答えを持っていない問題を解決するとき、いう例をあげた。そこで取り敢えず、リーダーシップを「1.何かを選択する、あるいは何かを決める時に必要なもの、2.何かを変える時に必要なもの」と定義して話をすすめたい。次回以降、どのようにリーダーシップについての研究が進んできたか、を見ながらリーダーシップは「変える時に必要なもの」という考えに行きついたか説明していきたい。

 

 

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