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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.82  リーダーシップ開発(3) リーダーシップ理論の変遷

なぜリーダーシップは分かりにくいのか

  リーダーシップという概念が分かりにくいのは、抽象的な概念であるだけでなく、誰もが、大なり小なり、リーダーシップを発揮した経験を持つからである。そのためいろいろな意見が存在する。非常な困難を経験しそれを乗り越えた人の意見やビジネスで成功した人の意見、スポーツでチームのリーダーとして活躍した人の体験などが尊重される一方、リーダーシップはリーダーだけに必要なものではなく、誰にでも必要なものという視点から、普通の人が発揮するリーダーシップについて観察して導いた意見も存在する。

当然、学問的に研究して導かれた意見もたくさんある。こういった抽象度が高く、実際に起こる現象との関係がいろいろに見える概念を理解するには、どういうアプローチが良いのだろうか。

 

理論の変遷を追いかけてみる

  一番良い方法は、これまでの研究の結果がどのように変化してきたかを追いかけてみることだ。これは手数がかかるが、いろいろな切り口から見たリーダーシップ像がわかるので、総合すれば全体の姿を理解することができる。問題は、ヘンリー・ミンツバーグが戦略サファリで、目の不自由な人が象を見に出かけた寓話を紹介したように、部分を知ったからと言って全体を理解できるとは限らないという点だ。

  この問題を回避するためには、「どういう状況に対応してその考え方が出てきたのか」に留意するのが良い。理論は、ざっくり言えば、その時代の問題点を解決するために創り出されたもの、と考えられる。
それゆえ、その理論が創り出された時代の問題点は何かを見れば、切り口の位置づけ(上からみたのか、横から見たのかなど)をある程度知ることが出来る。切り口の位置づけが分かれば、全体像を見誤る可能性は小さくなる。

 

基本的な二つの質問

  リーダーシップ論の研究は、テーラーの科学的管理法的な考え方とやがて生まれた人間関係論の影響を受け、一般作業者と監督者の関係に着目するところからスタートしている。リーダーシップ研究にながれる基本的な質問が二つあり一つが、「業績の良いチームと悪いチームは何処が違うのか」という質問で、この質問に答えるにはリーダーとチームの業績の関係を調べればリーダーシップの中身が分かると考える。(この考え方を仮にAタイプとしよう。)

もう一つは、「リーダーと普通の人はどこが違うのか」という質問である。
この質問に答えるにはリーダーの行動を観察測定すればよいという考え方である。(これをBタイプとしよう。)前者は、ミシガン大学を中心とする研究(1940〜50)、

後者はオハイオ州立大学が中心で1963年に、リーダーの行動を測定する物差しとしての標準的な質問票が開発されている。この二つの研究はその後のリーダーシップ理論の変遷に大きな影響を与えているので、以後このA,B二つのタイプからどのような理論が派生していったかについて見てみたい。
Aは「効率を上げるには」という切り口、Bは「リーダーはどうあるべきか」という切り口と考え以後整理することにしよう。研究者の意図というよりは、リーダーシップという抽象的な概念の全体像を理解するうえでの、便法である。

 

戦略論とリーダーシップは関係が深い

  切り口の変化に影響をあたえる時代の変化の着目点は、このコラムの切り口であるビジネスモデルによる競争という視点から、戦略論の変化が起こった時期とする。ビジネスモデルも戦略も実行しなければ意味がない。そのため、戦略論とリーダーシップは関係が深いというのが持論であるからだ。

次回は、業績の高いチームと低いチームはどこが違うのかという質問に、ミシガン大学はどういう答えを見つけたか、から議論をすすめることにしよう。なお、それぞれの理論の説明は神戸大学の金井教授の「リーダーシップ入門」(日経文庫)によっているので、理論の中身を詳しく知りたい人はこの本を読んでほしい。

 

 

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