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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.83  リーダーシップ開発(4) 業績の高いチームは何処が違うか

科学的に測定してみよう

  リーダーシップというよく分からないものを捉えるために、何らかの方法で測定してみようというのがリーダーシップ研究の始めにある。これは、マネジメント理論が生まれる元となったテイラーの科学的管理法やメイヨーのホーソン実験の伝統を継ぐ考え方である。
ミシガン大学が質問紙を使って、業績の高いチームのリーダーと業績の低いチームのリーダーの仕事の仕方の違いを調べはじめたのは、リーダーの違いが業績の違いに結びつくと考えたためだ。「効率を求める」という意味では、テイラーやメイヨーと同じ基盤上にある。

ミシガン大学の研究は1940年から50年代の初期までだが、この時代まだ経営戦略論でいう戦略計画学派は生まれていない。効率が大きなテーマになるのは、第二次大戦後 ソ連の発展によって計画経済と自由主義経済の優劣が議論になりはじめてからであり、資本主義経済も計画性をもっと取り入れるべきとしたのは50年代後半である。従って、効率の研究という視点からみるとリーダーシップの方が戦略論に先んじていたということができる。

ちなみに戦略計画学派の先達セルズニックが、組織の内的状況と組織を取り巻く外的期待を一致させる必要性などについて書いた「組織とリーダーシップ」を発表したのは1957年のことである。(なお、彼のリーダーシップについての考え方は、後にミッション型リーダーシップと呼ばれるリーダーシップ論の先駆けにもなった。)

 

好業績部門と低業績部門のリーダーの違い

  ミシガン大学が発見したことは、一言でいうと、好業績部門のリーダーは従業員中心で仕事については、細かいことはいわないで任せる、低業績部門のリーダーは仕事中心で細かい指示を出す、という内容だ。仕事を達成するために「もっと頑張れ」と言われた時の部下の反応は、前者の場合は肯定的、後者の場合は否定的。理解しやすい結論で、その後の研究の手掛かりとなったが、一方で「測定する」ということの難しさを明らかにした研究でもあった。

  問題の一つは、「従業員中心」と「仕事中心」がプラスとマイナスのように対極になっている点である。判定の目盛が一軸なので、「仕事中心だが人間関係もよい」とか「人間関係は良いのだが仕事の効率は今一つ」といった、実際によくある現象が捉えられていない。測定に使う物差しとしては不十分ということになる。

  もう一つの問題点は、データの読み方についての疑問が生まれたことである。この疑問は、後にリーダーシップについての新しい考え方に発展したので、ミシガンの研究が生み出した成果の一つと言ってよい。
 

リーダーシップは状況に左右される?

  ミシガンの研究は、リーダーの行動が業績を左右するという前提に立っているが、業績の方が、リーダーの行動を左右すると考えられないだろうか。なぜなら、業績が悪いから細かいことまでがみがみ言わざるをえないので、業績が良ければその必要はない。業績の良し悪しの方が、リーダーの行動に影響を与えているとも考えられる。

  この疑問は、リーダーシップとリーダーの置かれた状況との関係を考える理論に発展する。例えば、部下が新人ばかりであれば、細かい指示が必要だし、ベテラン中心であれば大まかな指示でよい。ベテランに細かい指示をすれば、マイクロ・マネジメントのいやな上司だと嫌われてしまう。(状況的リーダーシップ論situational leadership 、1981年にP.ハーシーとK.H.ブランチャードが書いた「一分間マネジャー」で有名、日本でも小林薫さんの翻訳でダイヤモンド社から出版された)

  状況的リーダーシップについては、コロンビアのシニア・エクゼクテイブ・プログラムで訓練を受けたし、仕事の場面でも活用をこころがけたので、追ってこのシリーズのどこかで、説明の機会を設けたいと思う。

 

もう一つの基本的質問は?

  ミシガンの研究は、リーダーシップは、効率を高めるという課題と強く関係するということを示唆し、その後の研究を方向付けた。では、もう一つの基本的な質問、「リーダーと普通の人は何処が違うのか」については、どのように研究されたのだろうか。それについては、次回説明しよう。

 

 

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