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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 

VOL.85  リーダーシップ開発(6) 効率を上げるには何が必要か

効率を上げるためには使命ミッションが大切

  どうすれば業績をあげる(効率を上げる)ことができるか、という問題意識は、ミッション型リーダーシップという考え方に発展する。リーダーが人間関係や仕事の仕方に配慮したとしても、組織が造られた目的や使命がはっきりしなければ、組織のメンバーが奮い立たず、そのため効率も上がらず、業績は向上しないという結果に陥ってしまうと考えられたためである。

戦略論で「組織は戦略に従う」と考えるのと同様で、効率を上げるには組織はミッションに従う必要があり、そういう状況を創り出すのがリーダーの仕事ということになる。この考え方は、実は、昔からよく知られていたもので、軍隊のリーダーの育成上、必須のテーマであった。

 

軍隊は国王の召使いではなく、国家の召使いであらねばならぬ

  ナポレオンがヨーロッパを席捲していた時代、イエナの会戦(1806)惨敗したプロイセンはシャルンホルストを中心に軍制改革に取り組み、国民皆兵に基づく常備軍の創設に取り組んだ。ナポレオンのフランスでは、フランス革命以降すでに国民軍アルメー・ナシオナールとなり徴兵制が成立(1793)していたからである。そのためには軍隊を国王の臣下という立場からプロイセンという国の臣下に変え、国民としての名誉ある義務を果たす立場に立たせる必要があった。

ミッションはプロイセンという国家の維持である。当然、国王や貴族は大反対したが中産階級の支持するところとなり、改革は成立。この時以来、軍隊のリーダーの仕事は、ミッションにフォロワーがコミットする、できるという状況をつくりだすことが最大の課題になった。

  現代のアメリカ陸軍のリーダーシップの教科書には、Be(どうあるべきか)、Know(何を知るべきか) 、Do (何をするべきか)をリーダーシップの三要素とし、リーダーシップとは、「任務を遂行しようとするとき、人々に目的と方向性と意欲を与えることによって人々に影響をあたえること」と定義していて、この延長線上にあることが分かる。

 

効率を上げるには、経験が必要

  計画経済と自由主義市場経済の競争という視点から、市場経済も計画経済の良い点を取り入れて、もう少し計画的に運営されるべきだという考え方から企業戦略が生まれたが、市場経済のなかにも注目すべき競争相手が60年代後半に出現した。高度成長を続ける日本である。その行動様式は低価格で市場シェアを獲得するという、非合理的と思われるやりかたであったので、ダンピングだとの非難が集中した。

しかし、日本の方法は理に適ったものだと説明できる理論的根拠を発見したのがBCGボストン・コンサルティング・グループのジョン・クラークソンである。彼はハーバード・ビジネス・レビューに「学習曲線から得られる利益」(1964)で、航空機製造にかかる一機あたりの労働投入量は、製造機数が倍になるごとに2割減少すると説明、これにより累積の生産量が倍になると一定の割合でコストが減少するとする経験曲線の理論がうまれた。この考え方と企業の市場シェアを結び付け、企業の資金の配分方法の道具に仕立てあげた(1969)のが、PPMプロダクト・ポートフォリオ・マネジメントというツールである。(この項、三谷宏治「経営戦略全史」による)

  このツールの良い点は、経験曲線や市場成長率、相対シェアは製品別に測定できるという点だ。効率を上げるのに何をすればよいかを具体的に考える手がかりを入手できるからである。
市場成長率が低くなった成熟製品で稼いだお金を、市場成長率が高く相対的シェアが高い製品(累積生産量を増やすことによってコストが下がったので、あるいは機能が優れているなどの理由あり)に投資を集中、市場成長率が低く相対シェアも低い製品(累積生産量が低くコストも下がらない、あるいは機能が劣るなどの理由あり)からは撤退するなど、事業の方向を決定することに活用できる。

日本企業の方法は、低価格で売り上げを伸ばし、経験量を増やしてコストを下げるので、当初これでは赤字と思われる価格設定をしても、そのうち利益を出すことが出来る。けして不合理な戦略ではないというわけだ。

 

リーダーシップと経験の関係は?

  コスト低減には累積生産量という経験が必要だという考え方は、事業計画と経験の関係を良く説明している。ではリーダーとリーダーの仕事の経験との関係はどのようなものか。経験がなければ人をリードするのは難しいは思われるが、どんな経験が必要なのだろうか。この点については次回考えよう。

 

 

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