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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.97  企業文化(3)変えるにはどうするかI

変革の8段階

  ビジネス環境の変化に伴ってビジネスモデルの変更が必要になった場合、どの部分を変えていくか考えてみよう。お客?お客さんに提供する価値?競争の仕方?どれを変えても企業文化を変えざるを得ない。企業文化は上記の三つの要素に適合するよう進化してきたからである。
問題は、変わりにくい文化をどう変えるかであるが、変えるためのプロセスは次の8つのステージに区分するのが良いというのが定石である。(コッターのLeading Change , The eight—stage process による)

  1. 変わらなければいけないという危機感の醸成
  2. 変革チームの結成
  3. 変わった後の姿(ビジョン)とそこに至る筋道(戦略)の提示
  4. 上記ビジョンと戦略の浸透
  5. ビジョン及び戦略達成の障害となる事象の排除
  6. 進捗が感じられるような小さい成功の獲得(複数)
  7. 変革が上手くいきそうと皆に信じられるような成果の達成
  8. 変革の結果を企業文化に刷り込む努力

以下企業文化についての理解を深めるために、上記の8段階と文化の関係について考えてみよう。

 

現状に対する不満についての合意が必要

  変わらなければいけないという危機感は、現状に対する不満が大きくなければ、生まれない。問題が先送りされるのは、まだ何とかなると考えているためで、現状に対する不満が十分に大きくないのだ。だが、変化するためには、不満の大きさだけでなく何が不満なのかについて組織全体の意見の一致が必要である。「あなたの会社の問題点はなんですか」という質問に、取締役会のメンバーの意見がばらばら、というのは良く見かける風景である。営業力か、新製品開発力か、原価低減能力なのか、それとも資金繰りかで対策は異なり、変えるべきものは変わってくるからである。

いろいろ不満なものはあっても、会社として最も優先的に取り組む必要があるのはどれか、という順序付けが出来なければ、話は進まない。とくに環境変化が大きく、お客さんのニーズが変化してしまった場合など、従来のやり方全てを見直す必要が出てきてしまう。お客軸基準を変えなければいけないだけでなく、このくらいの速さで新製品を市場に投入出来ればよいという時間軸を変える必要もでてくる。

  いや、製品のサイズ、デザイン、性能、価格帯などのお客基準を修正するだけで対応できる変化は、会社にとって、さしたる問題ではなく現状に対する不満も大きくならないと考えられる。一番大変なのは、このくらいの事は難しくてもできるという効力軸を変えなければ、対応できないと考えられるほど大きなビジネス環境の変化に直面した場合である。事業をやめてしまうか、変化にチャレンジし新しい企業文化を創るか、決めなければならない。
 

変えた後の姿(新ビジョン)について合意が必要

  現状に対する不満について合意が出来たとして、次に問題になるのは、変えることによって創り出されるものの姿かたちについての合意である。そもそもこういうことをしたいといって作った事業の目的(旧ビジョン)と新しいものは同じなのか違うのかである。仮に同じであったとしても、通常、変化に対応するために「このようなことが出来る会社にしなければならない」という絵は、人によって千差万別、同床異夢というきらいがある。ここを統一しておかないと、変革の作業に手戻りや、「こんなはずではなかった」と、反変革の動きが生まれてしまう。新しいビジョンの内容によっては変革チームのメンバーの人選も異なってくるので、変革の8段階の2と3のステージは、順序を入れ替えるケースも出てくる。

  ビジョンは遠くの丘の上の旗、というのが戦略を考える際の関島の定義だが、写真のフィルムのメーカーなのか、化学分野のメーカーなのかという違いは、後者が、前者の持っていた技術から定めたものだとしても、人々に与える印象は非常に異なる。

同じ仕事をしていても、トラックで荷物を運搬する会社と定義するか、ロジスティックで業務の効率化を支援する会社と定義するかでは、大違いである。自己認識の仕方を変えることによって変えた後の姿を示すことを再定義re-definition と呼ぶが、先に説明したように、文化とは、何が好ましいと思うかについての自己認識なので、再定義は文化の変更を意味する。従って、変えた後の姿について得るべき合意とは、「こういう企業文化が今後必要」と皆が理解することである。

 

 

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