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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.116  組織―再論― (4)目標の共有化によるコントロール
 
 

間接的制御の階層:ビジョン > 文化 > 目標の共有化

  戦略目標に階層があるのと同じように、組織に自由に活動させても、全体として目指す方向から逸脱しないよう制御するための方法には、階層がある。最上位に位置するのがビジョンで、その下が企業文化である。企業文化は、好き嫌いに強く関係するので、具体的にビジョンを達成するための具体的方策を考える際、大きく影響する。「どのように役割分担を考え、どのような組織を作るか、組織間のインターフェースをどう設定するか」などに、である。

しかし、組織は「分ければ固まる」ので、自由に活動させると、全体最適ではなく部分最適を目指しかねない。それを防ぐのが進むべき方向を示すビジョンであり、企業文化なのだが、それだけでは十分でない。目標の共有化が必要である。それぞれの組織が、「目標から考えて自分の役割は何か、どの様に動けば、全体が目標とすることの達成に役立つか」を常に考えなければ、上手くいかないのだ。

 

目標の共有化の条件

  目標の共有化は、言うのは簡単だが実際に実行するのはかなり大変である。なぜなら、最低限、次の3つの条件をそろえる必要があるからだ。

  1. 全員が賛成できるものでなければならない。
    「私は富士山に登りたい、いや俺は江ノ島で海水浴の方が良い、」では困るのだ。
  2. がんばれば達成できそうな目標でなければならない。
    「甲子園を目指す?無理、無理、とてもできそうもないよ」では、目標とはならない。
  3. 達成できればとてもうれしい目標でなければならない。
    わくわくするような目標であればがんばれるからだ。

  これらの条件を一挙にそろえるのは難しい。だが、いっぺんに揃えなければならないわけではない。

  1. 議論を重ね目標を徐々に整理する。
  2. 試行をいくつか重ね、出来そうな方法、道筋を見つけだす。
  3. できると何が嬉しいか、達成できないと何が困るかを議論する。
などの過程を経て、「もしかしたらできるかもしれない」と皆が思うような状況に時間をかけて到達するのでもよいのだ。上からの命令では、目標の共有化はできない。
 

目標の共有化 > 仲間に対する信頼 > 信頼をつくるプロセス

  目標の共有化のためには、もう一つ大切な条件がある。それは仲間に対する信頼である。自分が自分の役割を全力で尽くしても、他の人が自分の責任を果たさなければ、目標は達成できない。工場が頑張っても営業がんばらなければ、業績が上がらない。お互いが「お前がだめだから上手くいかないのだ」と非難を応酬し合うのでは、目標は達成できない。 「ここは、あいつに任せれば大丈夫」と自分の役割に全力投球できるようでないと、目標の共有化は実現しない。よって、目標の共有化の下部の階層には、仲間にたいする信頼が存在しなければならない。

  特に、変化が激しく、次に何が起こるか予測が難しい状況で、仕事をする場合は、チームのメンバーがお互いに信号を出しながら物事をすすめなければ、ならない。営業が現場で感じた些細な変化、製造部門が気が付いた競争相手の技術水準の変化、などなど。誰かが感じた変化を、「本当かどうか、別の視点から、確かめてみよう」というのでは間に合わない。あいつが専門家としていうのだから、きっとそうだ。直ちに対策を考えよう」でなければならない。

  レンジャーのような小チームの特任部隊が、敵のひそむビルディングに突入する場合、「右側に敵がいた場合は、私が対応する、左側はきみに任せる。正面はあなただ」と役割分担し、自分の分担以外からの攻撃で負傷しても、「あいつが対応しても防げなかったのだから、しかたがない」と考えることができなければ、危険な場所に突入はできない。仲間の技量に対する信頼がなければ、不測の事態には対応できないのだ。

 

信頼をつくるプロセス

  仲間に対する信頼は、一夜にしてはできない。一緒に仕事をして、お互いの力量を理解し、尊敬しあうようになって初めて信頼は生まれる。チームワークは自然にできるのではなく育てるものだと言われる理由がここにある。一番大切なのは、違いを尊重する姿勢である。自分が持っていないものを持っている人を偉いと認めなければならない。

  しかし、「他の人の能力を認めるということの基準」は、厳しくなければ、成功には結びつかない。野球のチームで投手力が弱ければ打力でカバーできないことはないが、それも投手力がある程度の水準に達していることが条件であろう。初回にいきなり大量点をとられてしまうのでは、ゲームにならない。「一定以上の実力の無い人は、仲間とは認めませんぞ」というスタンスは絶対に必要である。ではどのようなプロセスを経て信頼は形成されるのか、次回はそのプロセスについて考えてみよう。

 

 

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