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3Dラーニング・アソシエイツ

21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.117  組織―再論― (5)仲間への信頼によるコントロール
 
 

目標を共有化する際の問題点

  組織に自律的に活動する権限を与えても、全体の目標から逸脱する心配が少ないのは 目標の共有化が出来ている場合だが、目標の共有化は簡単ではない。目標の選択やその達成方法については、企業文化が影響するので、対象は一定の範囲に収まるとしても以下の条件を整える必要がある。

  1. 目標は、全員が賛成するもので、頑張れば達成できると思われるもの。達成できればとてもうれしい目標でなければならない。
  2. 初めから明確なものである必要はなく、議論や試行を重ねるうちに徐々にはっきりして来たものでもよい。
  3. しかし上記の条件に適う目標は、おおかた「難しい問題」であり、各人が自分の役割に全力投球できるようでないと達成できない。そのためには仲間に対する信頼がどうしても必要である。「ここは俺にまかせろ」、「そっちは君に任せる」という状況が成立する必要がある。
  4. 仲間に対する信頼とは、きっとこの程度のことはやってくれるだろうと信じられる状況のことなので、別な表現をすれば、「一定以上の実力がない人は、仲間とは認めない」というスタンスにつながる。
 

仲間の評価が怖い

  「一定以上の能力がなければ仲間とは認めない」という考え方は、職能別労働組合の原点となるギルドの考え方で、ギルドは、一定以上の技量の維持のために教育訓練に力をそそぎ、一定の水準に達したと、仲間に認められた人だけに、組合員の資格をあたえた。

  同様にレンジャーズやシールズに代表されるような軍隊の特殊精鋭部隊も、厳しい訓練を修了できたものだけが隊員になれる。だが、単に修了証書がもらえればよいという訳ではない。仲間の評価が重要なのだ。本当に全力で課題に取り組んだかが問題で、仲間は、上官の見えないところも見ている。手抜き作業ばかりの仲間はいざという時信頼できない。お互い助け合うが、いつも助けられる側にいるようでは、仲間とは認められない。上官の評価もさることながら、仲間から仲間と認められなければ一員にはなれない。

  私が少年時代、西鉄ライオンズという強いプロ野球チームがあって、その後伝説的なプレーヤーとなる選手がたくさんいた(イチローを育てた仰木監督もその一人)が、内野にとんだ平凡なゴロは誰もカバーに入らず、エラーをすると冷たい視線を向けるだけだった、という。「お前、そのくらい当然とれるよな」「あっそう、取れないの。では、仲間とは認めないよ」である。

 

目標の共有化には、チームワークが必要

  信頼できる仲間を適切に選択できたとしても、目標の共有化には、もう一つ残る問題がある。各人が自分の果たすべき役割に重なりがあったり、誰も担当しない部分が出来たりしては、困るのだ。ここにチームワークが必要になる。各人が「おれの分担は、ここからここまででよいか」という信号を発信し、分担を調整しあうとともに、一旦決まった領域も、共有する目標の達成のために必要とあれば、その領域を超えて他の人を応援するという、チームワークである。先の西鉄ライオンズの事例でも、難しい打球の場合は、サッとカバーする位置に内外野の選手が皆、動いたという。チームとしての結果には、各人が責任を負うと思っていたからだ。

  ここまで、人材の特定、処遇、人材開発、組織とそれぞれに再検討してきた。特に組織については、組織の分権化と集権化に関する問題を考えてきたが、それは、予測が難しい時代には、分権化が必要と考えたからだ。しかしそれでよいかどうか、この辺でこれまでの再論を統合し、今後のHRM戦略のあるべき姿について考える必要がある。次回以降この点について考えてみたい。

 

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