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MIAコラム:キャリア形成と戦略

キャリア形成と戦略(2)キャリア形成には、戦略が良く似合う 

戦略とは何か

 議論を進める前に、戦略という言葉は意味の範囲が広い言葉なので、誤解を避けるために、ここで使い方を定義しておく必要がある。先に、戦略とは、「遠くの旗を目指し、そこに到達するための地図を描くこと」としたが、これだけでは説明が不十分である。地図を描くとは、計画あるいは、とるべき行動の参考となる方針を決めることだが、目標が遠くの旗なので、当然のことながら短期ではなく長期の計画ないし方針である。また遠くを眺めるのであるから、そこには将来の展望、予測がある程度存在していなければならない。別な言葉で言えば、パースペクティブのある計画または方針と言うことが出来る。

アメリカの大リーグで野球をやりたいなら、小学生の時に少年野球のチームに入るのがよく、高校では甲子園に出場できるような学校でレギュラーのポジションが取れなければならない、といった事前の鳥瞰図である。しかし実際は、大リーグ到達の道筋はいろいろである。日本のプロ野球経由で大リーグ入りするとして、高校から直ぐプロ入りする人もいれば、大学野球や社会人野球を経験した後プロ入りする人もいる。筋道はいろいろだが、そこには野球が上手になるための努力をしつづけるといった、一貫した方針があるはずで、その意味では、振り返って見た場合、軌跡は仮にジグザグしていても一定の方向を目指し力強く進んでいなければならない。戦略とは、将来を見通す鳥瞰図でもあり、経歴をコントロールする力でもある。

 

地図の描き方

 地図の描き方は、必ずしも最短距離を意味しない。描き手にとって最も効用が大きいと思う描き方をするので、人により異なる。富士山に登るという目標があったとしよう。近い将来、ヒマラヤに遠征したいと考える人は、トレーニングのために荷物を重くし、出来るだけ速い速度で頂上にたどり着こうとするかもしれない。一度は富士山に登ってみたかったと思っていた中高年の人には、途中の景色を楽しみながらのんびり行こう、場合によっては山小屋で一泊、という選択もありうる。目標の達成の仕方についての意見、姿勢が描き方に影響するのだ。

意見、姿勢を決める際必要なのは、自分の持つリソース(資源)の質と量、そして取り巻く情勢、外部環境についての判断である。登山の場合であれば、自分の体力や時間的制約などがリソースにあたる。体力のある若者と中高年では登りかたが違う。月曜日には必ず会社に出なければいけない登山者と、自由業なので融通がきく人では登り方は異なるのは当然である。登山の場合、外部環境の代表は天候であろう。天気の良い時と悪い時で登り方が変わってくるのも自然なことである。

 地図の描き方に影響をあたえる、自分の利用可能な資源の質と量及び外部環境は、時間の経過とともに変化する。それに対応して道筋の変更が必要になる。道筋に高い岩壁があったとして、ロッククライミングの装備と体力というリソースがあれば、まっすぐ登ることによって時間というリソースを獲得できるが、そうでなければ時間はかかるが、岩壁を迂回するルートを捜すことになる。ロッククライミングの技術を習得する以前であれば、前者の選択はありえない。

 

遠くの旗とは

 戦略とは、遠くの旗を目指し地図を描くこととすると、遠くの旗は戦略の目標ということになるが、単なる目標とは少し異なる。なぜなら戦略の目標は、長い間の努力の結果ようやく達成できる自分にとって好ましい状況なので、達成した後はその状況を持続しようとするからだ。大リーガーになるという目標は、1シーズンだけプレーできれば良いということではないのである。

自分にとって達成したい状況をより正確に表現しようとすると、ビジョンとかミッションを定義する必要が出てくる。人材開発でワールドクラスと認められる存在になるというビジョンを掲げたとして、何故そうなりたいかといえば、例えばインドや中国の急成長に対抗しようとすれば、どうしても高度なマネジメント能力が必要で、日本にそういう能力を育てることが出来る、優れた教育機関が必要と考えるからだ。

従って、グローバルに活躍できる経営者や自律的なプロ人材(一人親方)の育成がミッションとなる。目標を明確にすることによって、チームのメンバーが元気出たり、自分の行動を自律的にコントロール出来たりするので、遠くの旗は、戦略の機能の一部分を果たすが、戦略そのものではないことは言うまでもない。

 

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 関島康雄のこのコラムは、MIアソシエイツのホームページに、2006年12月より9回にわたって掲載され、好評であったので、3DLAのホームページに載せることにしたものです。再掲に当たり、読みやすいよう表現を修正、図表やイラストを入れ、説明不足な点を書き加えましたが、内容的には大きな変更はありません。(本サイトでは全10回での掲載)
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