地図の描き方は、必ずしも最短距離を意味しない。描き手にとって最も効用が大きいと思う描き方をするので、人により異なる。富士山に登るという目標があったとしよう。近い将来、ヒマラヤに遠征したいと考える人は、トレーニングのために荷物を重くし、出来るだけ速い速度で頂上にたどり着こうとするかもしれない。一度は富士山に登ってみたかったと思っていた中高年の人には、途中の景色を楽しみながらのんびり行こう、場合によっては山小屋で一泊、という選択もありうる。目標の達成の仕方についての意見、姿勢が描き方に影響するのだ。
意見、姿勢を決める際必要なのは、自分の持つリソース(資源)の質と量、そして取り巻く情勢、外部環境についての判断である。登山の場合であれば、自分の体力や時間的制約などがリソースにあたる。体力のある若者と中高年では登りかたが違う。月曜日には必ず会社に出なければいけない登山者と、自由業なので融通がきく人では登り方は異なるのは当然である。登山の場合、外部環境の代表は天候であろう。天気の良い時と悪い時で登り方が変わってくるのも自然なことである。
地図の描き方に影響をあたえる、自分の利用可能な資源の質と量及び外部環境は、時間の経過とともに変化する。それに対応して道筋の変更が必要になる。道筋に高い岩壁があったとして、ロッククライミングの装備と体力というリソースがあれば、まっすぐ登ることによって時間というリソースを獲得できるが、そうでなければ時間はかかるが、岩壁を迂回するルートを捜すことになる。ロッククライミングの技術を習得する以前であれば、前者の選択はありえない。