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MIAコラム:キャリア形成と戦略

キャリア形成と戦略(8)競争優位の戦略 

競争の状況

 選択したキャリアが従来からあるもので、キャリアを取り巻く競争の状況が比較的誰にでも把握、あるいは予測可能な場合は、自分の特徴点に合わせて競争の仕方を選択する必要がある。競争の状況とは、

1)その分野の専門家になることの難しさの程度。難しいほど新規参入は制限されていることになる。従って専門家になるのは大変だが、なってしまえば比較的安定した生活が期待できる。たとえば医師や弁護士。

2)分野が重なる専門家が他にいるかどうか。公認会計士の仕事と税理士の仕事は重なる部分があり、場合によっては代替可能である。代替可能な専門家の数が多いほど競争は厳しくなるので自分の特徴を強く打ち出す必要が出てくる。現代では思わぬ分野の競争相手が出現する可能性が高い。普通、ゴルフのレッスンプロの競争相手は、テニスのコーチやダンスの先生なのだが、海外旅行や温泉に出かける人が増えるとお客さんが減ってしまう。その意味では旅行代理店のプランナーは新しい競争相手である。

3)その専門分野の仕事に対する需要はどのくらいあるのか、増えているのか、減っているのか。例えば、個人資産が大きい人が増えれば、ファイナンシャル・プランナーに対する需要は増加すると考えられる。

4)仕事をする上での必要な情報や専門性を高める教育の機会は、十分にあるかどうか。司法試験を受けるための予備校はあるが、為替取引の専門家を育てる専門学校はまだないので、実務を学ぼうと思ったら、銀行とか商社に就職しなければならない。

5)目標とする専門分野に、どのくらいたくさん専門家が既に存在するのか。既に大勢いるのであれば、それらの人と自分を差別化できるかどうか考えなければならない。

 

自分の特徴点

 自分の特徴点とはこの場合、自分の強み弱みと考えてよい。何が得意で何が不得意かだが、これは単に専門分野とか自分の性質についての話ではない。それだけでなく自分の持っている時間の長さや、経済状態も含まれる。現在は会社に勤めているが、いつか学校の先生になりたいという夢を抱いていたとする。いずれどこかで会社を辞めて、その方向に踏み出さなければならない。子供が大学を卒業した時点をとらえて、希望退職に応じるか、定年まで待つか、などの決断が必要だが、持っている時間が長ければ選択の余地は広く、短ければ選択の範囲は狭くなる。同様に、持っているお金の量が多ければ、専門性の向上のために自分に投資することもできるし、休職や退職という形で、勉強する時間を買うことも出来る。

 

競争の仕方の選択

競争の状況に自分の特徴点を照らし合わせ、その上で選択するのが競争の仕方である。競争の仕方とは、特定の専門分野の中でも全体の専門家を目指すか、さらに狭い範囲を自分の得意分野とするかであったり、取り組みの切り口の特徴点であったりする。

事例をあげれば、人材マネジメントという専門分野でも、人材マネジメント全般を専門とする人もいるが、賃金問題に強い人、人材育成に詳しい人もいる。法律的アプローチが得意な人や心理学的接近を特徴とする人もいる。自分はどのタイプの専門家を目指すのかが競争の仕方の選択である。要は、特定の専門分野で、自分らしい方法で仕事をすることができればよく、別な表現をすれば、適職を自分で創る方法の選択である。

 

強い競争相手がいる方が良い

 競争優位の戦略というと、自分が競争上の優位にたつことが出来るような選択をせよ、というように聞こえるかもしれないが、そうではない。競争相手が、自分より弱い人ばかりでは、腕前を上げることが出来ない。一般的には、強い競争相手がいる環境の方がよい。互いに切磋琢磨するような競争相手がいて、勝つためにそれぞれが自分の特徴点を磨かざるを得なかった、という環境がキャリア形成には一番望ましい。しかし、これには気持ちの強さが必要で、そうでないと競争の激しさに自分を見失うケースもでてくる。鶏口となるとも牛後になるなかれ、という諺もある。お山の大将でいる方が能力を伸ばしやすい人もいる。厳しい競争条件を選ぶか、そうでないかも自分自身の特徴点から判断するべきなのである。

 
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 関島康雄のこのコラムは、MIアソシエイツのホームページに、2006年12月より9回にわたって掲載され、好評であったので、3DLAのホームページに載せることにしたものです。再掲に当たり、読みやすいよう表現を修正、図表やイラストを入れ、説明不足な点を書き加えましたが、内容的には大きな変更はありません。(本サイトでは全10回での掲載)
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