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コーヒーブレーク(10)

 
即応能力Readiness向上に向けた 米国陸軍の挑戦

  2年ぶりにウォートンスクールのリーダーシップ・コンフェレンスに出席しました。このセミナーには軍関係者がスピーカーとして招かれることが多いのですが、今回は、陸軍のJoseph W. Westphal 次官が出席、陸軍の変革状況について説明しました。人材マネジメントを考えるうえで即応能力 Readinessという視点 が重要と思っていたので、とても興味深く聴けました。

 

いったいアメリカのリーダーシップはどうなっているのだ

  この会合に軍関係者が呼ばれる背景には、軍事を取り巻く厳しい状況があります。イラク問題はさっぱり収束しないしアフガンも先が見えない。イスラエルはイランをいつ空爆するかもしれず、中国はアジアでの脅威になり始めている。日本はさっぱり協力してくれない。
陸軍はリーダーシップを発揮していないのではないか、「どうなっているか出てきて説明せよ」というわけですが、これは陸軍にとってなかなか難しいテーマです。しかし、Westphal氏は、それを見事にやってのけました。

 

陸軍はフォーチュン500企業

  米国陸軍のCEOは大統領、取締役会は議会、監査役は会計検査院、関係会社は空軍、海軍、海兵隊。このような組織で何が起こってもすぐに対応できるよう準備するという目標を、限られた予算という制約の中で追及している。
組織形態、事業規模、外部環境に素早く適応という目標という三つの要素から考えると、米国陸軍はフォーチュン500企業と同じ組織といってよい。企業も外部環境の変化に対応するのに苦労しているが陸軍も同様だ。

 

即応能力向上のカギは人材開発

  常に変化する外部環境に適応するためには、常に組織の変革が必要だが、それを実行するのは人、よって人材開発human capital developmentが重要である。訓練、リーダーシップ開発、文官、武官それぞれのサクセション・プランの計画・実行、などなどの施策がおこなわれている。

軍人の場合、士官学校卒業後,業務経験を経て選抜者が陸軍大学校 WarCollege でそれぞれの専門軍事知識を学ぶが、軍隊は管理業務や法務、警察の仕事なども存在するので、キャリアによってジョージタウン大学や警察大学校などの外部の機関に派遣しMBAなどの資格取得を奨励している。(注、2010年、ウォートンには空軍から学生がきていた。)キャリアパスごとにメンター制度も導入済み。さらに上位のポジション(将官クラス)の候補生は大学のシニア・エクゼクティブ・プログラムに派遣(注、私が参加したコロンビアのコースにも陸軍から3名参加)している。

  大臣(政治家)、国防省(官僚)、参謀本部(軍人)の三者の合議で方向が決められるが、これは株主、取締役、執行役員の三者の意見が企業経営に反映するのと同様。(意思決定の透明性を確保するために業務プロセスが明確に定められているといって、資材の調達システムや予算管理システムのダイアグラムが示された。複雑で短時間では理解不能。おおむね大企業の仕掛けと同様な印象。)

 

変革に挑戦 Transform the organization to meet ever changing environment

  国防費の削減要求、変化する外部環境への適応といった課題のもと、いかに即応能力の高い組織を維持するかに努力を傾注しているが、それは企業が外部環境に適応するため努力していることと同じで、取られている施策も同じようなものが多いのだということを理解してほしい。(言外に、500企業だってそんなに上手くできてはいないでしょう、リーダーシップの問題ではなく、そもそも変革 Transformationは難しい仕事なのでは。)
なるほど、と思った次第。
以上 
 
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