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コーヒーブレーク(18)

 
ダイバーシティ活動の問題点3 流行とトレンドは別な次元

先行グループとそれに続くグループの間のギャップは大きい

 女性マネジャーを増やすために必要な変化を創りだす責任は、社会にも、会社にも、女性自身にもある。このコラムのスタンスは、「社会、会社、女性自身それぞれが他に、もっと変われというのでは目標は達成できない。まず、女性自身にフォーカスして対策を考えよう」というものだ。なんだか一方的で、女性だけに責任を負わせるのかという非難を浴びそうだが、それには理由がある。

 変化を市場という視点から見ると、(1)新しいものに一番先に反応する革新派Innovators, (2)それに続く先行派 Early Adopters 、(1)と(2)の合計が16%を超えるあたりからようやく反応しはじめる(3)アーリーマジョリティEarly Majority、(4)市場の過半数が反応した後、遅れてトレンドに従う後追い派Late Majority (5)トレンドには従わない少数派Laggards に区分できるが、(2)と(3) の間には深い割れ目キャズムが横たわっているからだ。

 

労働着かファッションか

  新しいトレンドは、革新的な人が創りだす。例えばジーンズを労働着ではなくファッションの一つとして捉えるという例で考えると、初めに(1)革新派がそう考え、その数が一定の数(2.5%あたり)を超えると次のグループ(2)Early Adoptersが、それは良いと感じファッションとしてジーンズをはき始める。その数が16%をこえるとかなり大勢の人(3)Early Majorityがそれに続き、考え方が一般に受け入れられ始める。
一般の人はファッション・リーダーと目される人々がデニム製の衣服を着用するのを見て、ファッションの一部と理解する。そうなる前に外国からの賓客を迎えるのにデニム製の衣服でいったりすると、労働着で不謹慎だとか相手に失礼だとかの非難を受けることになる。

  デニムの国アメリカでも60年代になってイヴ・サンローランなどのデザイナーが素材として使い始め、ジャックリーン・ケネディなどが着はじめても、(3)の人々がファッションとして受け入れるまでには時間がかかっている。要は社会の受け止め方は簡単には変わらないのだ。

 

女性マネジャー は、まだ先行派の時代

  仮に上記の観察がダイバーシティ問題に当てはまるとすると、(イノヴェーションの普及という視点からすると当てはまると考えているのだが)女性課長相当職比率が6.8% ということは、平均的にはまだ先行派の時代で、女性マネジャーが普通にはなっていないということだ。従って、女性が主戦力としてどうしても必要という職場を別にすれば、女性の事情を考慮した勤務形態や教育制度が整備される状況にはないのが普通である。まして、男性が育児休暇をとるなどは(1)の時代(2.5%以下)で滅多にある事ではない。

トレンドが生まれる(3)の時代になるためには女性マネジャーの比率が16%を超えなければならない。だが、先行派とアーリーマジョリティの間の溝は深いので、16%を超えるのは大変と予想される。女性を活用せよという流行はおこっても本当の意味で女性を働きやすくするトレンドは直ぐには生まれない。
従って、そのうち会社の制度が変わるとか社会が変わるとか期待しても、期待はなかなか実現しない。だから、そんなことを期待せずに、「まず先行派を増やすことに専念しよう。制度や社会慣行は後からついてくる」と考えた方が良い。

 

女性管理職比率が16%を超えるための方策

  現在すでにマネジャーになっている人は、多かれ少なかれ革新派か先行派で、実力で現在の地位を獲得した人で、ある意味で普通の人マジョリティではない。従って、この人たちの動機づけに役立った対策(例えば女性で大活躍をした人に話をしてもらう)は普通の人にあまり役立たない。聴いた人は、「あの人は優秀だからできたので私には無理」、「あんなにがんばらなくてはいけないのでは、偉くならなくていい」といった反応を生んでしまうからだ。
では、普通の人にマネジャーを目指してがんばってもらうためにはどうするか。日本のHRMが昔から持っている仕掛けを理解してもらうのが一番だと思う。何回も言うが、日本型HRMでは「課長になる力がついてから課長になるのではない。課長になったから課長の力がつく」のだ。現に男性の場合は、普通の人も管理職になっている。次回はこの日本型HRMについて説明しよう。
 つづく 
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