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コーヒーブレーク(22)

 
ダイバーシティ活動の問題点7 人材開発担当者の能力不足

戦略的思考の不足

  女性の活用について関係者と議論するとき、何度も「ウーン、これでは問題は解決できないのでは」と思わされる。理由は、教育担当者の「問題の難しさに対する理解」が大幅に不足していると感じるためだ。女性を活用するために取組まなければいけない課題は、女性本人、会社、社会が、それぞれに数多く抱えている。このため、関係者がたくさん存在するだけでなく利害関係も複雑で、解決に時間のかかる難しい問題である。

  一般に、難しい問題の解決には戦略的思考、すなわち目標の階層区分や主戦場の特定、戦略の成功・不成功の判定基準、戦い方などを具体的に考え、状況の推移に応じて、それらを柔軟に修正していくという思考方法が不可欠である。しかし、人材開発担当者は戦略的思考を十分に訓練されていないケースが多い。

  

ビジネスからの距離が遠い

  戦略とは、そもそも競争に勝つために必要なものなので、勝ち負けに直接晒されていないと戦略的思考は育ちにくい。日本では、ビジネスとは関係なく独立的に「正しい人材マネジメントが存在する」と考える傾向が強いので、ビジネスと人材マネジメントの関係が希薄なところがあるのだが、人材開発の担当者は、仕事の性質上、人事や労務の担当者より、一層ビジネスからの距離が遠くなりがちである。そのため、問題とその解決策が正しく繋がっているかをあまり考えない。

しかし、勝ち負けに晒されているとこの関係のチェックは、おこなわざるをえない。例えば、商品が売れないという問題に対する答えが値下げという場合、売れない理由がデザインであれば、問題と答えは正しく繋がっていないのだ。だが、「教育は直ぐに結果がでるものではない」と考えると、問題と答えの関係の点検は甘くなる。

  女性活用問題に取り組む際、問題の大きさや特質に配慮が薄い理由の一つが、人材開発担当者とビジネスの距離が遠いことにある。

 

主戦場を定めなければならない

  多岐にわたる難しい問題の解決には、目標の上位・下位といった階層や主戦場(ほかで多少負けてもここで勝てば、勝利にむすびつく戦場)を定め、そこに戦力を集中する必要がある。これまでの議論で述べた通り、この問題の解決には「仕事が人を育てる」という方法を使うのが良い。
会社も社会も当然変えなければいけないのだが、そのためには女性管理職の比率がかなりの比率(例えば15%を十分に超える水準)に達しなければならない。なぜなら、文化や慣行の変化速度は遅く大勢の人が変化した後ようやく変化するからである。

それゆえ、それらの変化を待つのではなく、変化を引き起こす原因に働きかけることを考えるべきである。この場合、任用比率がアーリーアダプターの水準に引き上げることが目標となる。そうであれば、女性活用というイノベーション普及の最大の課題は、アーリーアダプターとアーリーマジョリティとの間に横たわる深い割れ目を、どうやってかなりの数の人を飛び越えさせるかになる。この課題の解決が主戦場である。

 

キャリア観の偏りとリーダーシップについての理解不足

  現状この割れ目を超えさせるのに障害となっているのは、昇進に対する女性の意識である。仕事を掴みにいってもらわないと、「仕事が人を育てる」が適用できないので、この点をなんとかしなければならない。そのためには、昇進にしり込みする必要はないことと、「主としてなにをマネージするかという視点」から見るとプロ人材には三つのレベルがあるというコンピテンシー重視型のキャリア観を理解してもらう必要がある。
要は、「課長になってから課長の能力をつける」で大丈夫だし「仕事は全部自分でやる必要がない」が、「なにをマネージしなければいけないか」を理解し「時間の経過とともにマネージ出来るようにならなければいけない」ことが分かればよいのだ。

  一方で、競争の実態はまだ「男性は100M競争、女性は家庭というハンデキャップを背負っているので実質105M駆けなければいけない」は変わらない。よって、このことを正面から認めた対策が必要である。それが、リーダーシップトレーニングである。

  リーダーシップは、組織を動かすときにも、自分の仕事の効率を上げハンデー分をカバーしてしまうためにも有力な武器である。子育てにも、家族の協力を得るためにも役立つ。さらには、仕事を取りに行こうと自分を動機づけるときにも有用である。リーダーシップは自分自身に対しても発揮できるのだ。人材開発担当者のリーダーシップについての理解が、「先頭に立つのがリーダー」、「リーダーシップは組織の長に必要」という古いタイプだと、この発想は生まれない。

  人材開発担当者の能力不足のため女性活用問題の対策が、数値目標の設定や講演会、部課長研修の一部手直しの域をでない。人材開発担当者の能力のブラッシュアップが必要である。
つづく
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