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コーヒーブレーク(31)

 
組織内一人親方のすすめ 2.0 II
 

「プロ人材に自分で育つ方法、サブタイトル 組織内一人親方のすすめ 2.0 」

  上記は、9月に出版予定の本の仮のタイトルで、まだ検討中だが、旧著の続編、バージョンアップ版である。大きく異なる点は、戦略立案プロセスに従がって書かれていることだ。すなわち、プロ人材に自分で育つという戦略目標を達成するための計画をどうやって達成するかを考えるというスタンスに立って書かれている。そもそも戦略とは、達成するのに時間と努力を要する難しい目標に至る筋道を考えるものである。プロ人材に自分で育つのは、時間を要する難しいテーマであるので、戦略的アプローチが必要なのだ。

 

なぜプロ人材に自分で育つことをすすめるのか

  第1章でまず上記の理由を説明する。一言でいえば、普通の人が自分らしい人生を送る方法として適しているからだが、プロ人材のイメージは人によってまちまちである。そこで英語のself-employed に相当する言葉として「一人親方」という、経営者でも従業員でもある自立した専門家像を紹介、組織の中に合ってもベンチのサインをいちいち見ないでも仕事のできる専門家であるとはどういう人か、を明確にした。旧著の読者は、既に知っていることだが、説明には後で使われるリーダーシップ理論(例えばサーバントリーダーシップ)や戦略論(事後的に決まる戦略など)からみて適当と思うものが使われている。

  プロ人材になることのメリットはこの10年間で変化はないが、不確実性は一層高まっているので、不確実性に対する対応策としてリアル・オプションの考え方について解説した。起業というのは不確実なことなのでこの理論が応用できるからだ。

  自分で育つことが必要な理由は、人が育つに必要な三つの力、すなわち「育てる力」「育つ気持ち」「育つ場」が必要だが、育つ気持ちは「自分で用意するしかない」から、である。

 

外部コンテキスト ピンチもチャンスもある世界

  戦略の立案には、内外コンテキストとの整合性がまず問われる。そこで第2章ではまず外部コンテキストについて、次いで第3章で内部コンテキストについて検討した。

  グローバル競争時代の特徴はいろいろあるが、中でもこの10年間の変化で目立つのは、複雑性の増大と、それに対する対応策の変化である。製品開発では、プラットフォームと呼ばれる共通部分と、製品の特長を担う機能デバイスとに区分して開発、その組み合わせによって多様な製品を作る方法とか、売れる製品が分かってから急いで作るというジャンケンの後出しのような即応性を高めて対応する方式、自分の方法がグローバル・スタンダードだとして押し通してしまう帝国主義的なやり方などいろいろな対応策が登場した。

  考え方の面では、二兎を追うのが正しいとする傾向が強くなった。二兎とは、時に相反するような価値観、例えば個人生活と会社生活、ローカルな価値観とグローバルな価値観などで、それらを同時に追求するのが正しいとするものだ。競争相手の拡大と個人への力のシフトもまた顕著なトレンドで、そのため成功の機会も失敗の機会も多い、ある意味エキサイティングな時代が出現しているという環境に我々は居るというのが結論である。

 

内部コンテキスト 買う方が偉いという不平等

  日本企業が持つ特徴で目立つのは、ビジネスモデルが内部リソースによって左右されることとリーダーシップの不足であるとは従来からある指摘だが、もう一つ関島が付け加えたいのは、「お客様は神様思考が強すぎること」である。これは、技術の方から考え市場のニーズを軽視しがちであるという日本のメーカーに対する批判と合わないようだが、実は同じ根から出た問題である。顔の分かったお客の意向に自分の持っている技術で応えようとするあまり、不特定多数のお客と言う市場から見るとニーズに合わなくなってしまうのだ。これは、日本が伝統的に需要主導型経済システム(顔の見える消費者のためにそれぞれの職業に専心努力するシステム、寺西重朗「経済行動と宗教」)であるためで、結果として製品の良し悪しは買う方が判断するという考え方となる。
  一方、西欧の供給主導型経済システムでは、よく知らない大勢の人のために製品を供給するので、製品の良し悪しの判定者は市場となる。良く知らない人と取引するために発達した契約概念が日本では乏しいのも同じ理由である。サプライチェーン・マネジメントも買う方が売り手に懐を見せろと迫るだけでは広がらないのも当然である。

 

不確実性とは具体的になにか?

  4章以降は戦略の中身の説明で、戦略目標の階層や戦略の成功不成功の判断基準などが説明されている。それらについては追って解説するが、次回はまず、グローバル競争時代の不確実性の中身について考えてみよう。不確実性が高いと言っているだけでは、具体的な対策に手がつかないからである。

つづく

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