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コーヒーブレーク(32)

 
組織内一人親方のすすめ 2.0 III
 

グローバル競争と不確実性の程度

  グローバル競争時代は不確実性が高い時代である。リスクは大きいが成功の機会もたくさんあるエキサイティングな時代である。グローバル競争がこれだけ普通のことになった以上、ただ大変だと恐れたり、目をそらしたりするのではなく、普通に対応する方法を考えなければならない。そのためには、不確実性の中身を良く分析する必要がある。そのとき役に立つのが「遠くが見える高台の見つけ方」である。

 

座標軸は、マネジメントの複雑性とビジネス環境の不安定性

  高台の見つけ方では、縦軸を広い意味での技術、横軸は市場とし、それを知っているものと知らないものに区分した。グローバルオペレーションに必要な技術は複雑な問題に対処するマネジメント能力と考え、「知っている」は、日本で発揮するようなマネジメント、「知らない」は、海外事業が発展すれば必要になる、より複雑なマネジメントとした。
横軸の市場は、法律や商慣行、政府の対応などのビジネス環境とし、「知っている」は自国および既に事業経験が十分にある地域、「知らない」は今後進出する国や地域のビジネス環境で、対象国が増えるにしたがって増加し不安定度が増すと考えた。

不確実性の4象限イメージ図
 

A 国内中心で事業をする場合

  この場合、求められるマネジメントは比較的単純でビジネス環境も安定的と考えられる。しかし、競争相手が日本に進出するようになるとビジネス環境は不安定化の方向に動く。

消費者が海外からインターネットで直接商品を購入したり、企業が部品・材料を海外から調達したりするようになってもビジネス環境は不安定な方向に動く。中国やオーストラリアからのお客が増えれば対応をせまられる。日本人も、連休に新幹線で金沢に行くか、LCCで海外旅行に行くかは選択の範囲である。従って国内中心で事業をする企業であってもグローバル化の影響を避けることは出来ないし、年々その影響度は大きくなっている。
 

D 海外事業の初心者

  日本市場に軸足を置きながら、海外に進出しようとする場合、輸出入業務は商社に任せるという形や、提携先を見つけ合弁で事業を行うという形態がありうる。M&Aで企業を入手しても、経営は現地側にまかせるというのであれば、マネジメントの複雑性は増加するが、勉強しながら事業を進められる。だが、本格的に海外事業展開をしようと思えば、他人任せでない方法が必要になってくる。

 

B 自ら手掛ける

  海外での事業を人任せにせず自分で手掛ける方向に踏み出した場合、ビジネス環境の不安定性は進出地域が増えるにしたがって不安定性を増す。マネジメントの軸足は初めのうちは日本にあるが、事業の発展に伴い徐々に現地事情に対応して複雑性を増していく。事業の発展段階が、輸出の代替からスタートし、進出先の市場中心にビジネスを展開するレベルにある企業(グループ1)と、海外事業が本格化し、進出先の市場だけでなく日本を含む周辺国へも輸出するようなレベルに達した企業(グループ2)では、B領域内の位置が異なり、グループ1は左下より、グループ2は右上よりになる。

 

C グローバル企業

  海外事業が広がり、地域本社を欧・米・アジアの3か所に持つようになった企業の場合は、マネジメントも複雑になりビジネス環境も不安定になるので、不確実性は最も高い。グローバルな市場に対応するので国の内外という区分は意味が薄くなる。しかし、企業の母国文化がオペレーションのスタイルに影響を及ぼすのは避けがたく、従業員の間に文化の違いによるコンフリクトは発生する。家電や半導体で経験したように、事業分野によっては撤退も視野に入ってくる。本当の意味でのグローバル企業は、理論上だけで実際には存在しない。

不確実性のレベルを、マネジメントの複雑性とビジネス環境の不安定性の二つの軸で評価すると4つに区分することができる。求められる人材も施策もこの区分によって異なることは当然である。自分の事業の不確実性のレベルを把握すべき理由がここにある。

つづく

 

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