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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(36)

 
第20回ウォートン・リーダーシップ・コンフェレンス
(‘16 6月15日 フィラデルフィアで開催)

Leadership To Make a Difference

  上記をテーマに8人が話をしました。その中で面白かったと感じたものを紹介します。(と言っても、聞き取り能力がPMになると落ちるので、AMに話した人が中心になってしまいました。PMのスピーカー、ごめんなさい。)

キャリアもまた不確実性が高いものなので、この理論が応用できると、組織内一人親方のすすめ 2.0 では考えている。例えば、起業する場合のリスクの低減策として、である。だが、それを説明する前に、リアル・オプションとはどんなものなのか、研究開発に適用した場合を事例に説明しよう。

 

1.Maggie Wilderotter : Chairman and CEO The Grand Reserve Inn

  雑誌フォーチュンの最も有力な女性50人 (ビジネス)にたびたび登場しますが、ビジネス・ラウンド・テーブルのエクゼクティブ・コミティのメンバーでもあり、アメリカを代表する経営者の一人です。とても感じの良い人で、シャツとズボンといった質素ないでたちが印象的でした。通信のエンジニアとしてスタートして以来のキャリアについて説明したのですが、ステップごとに新しい仕事にチャレンジする勇気に感心しました。

また、成功の秘訣は家族にありが持論(妹もキャンベルスープのCEO)で、「子供とのかかわりがリーダーシップを育てる」「家ではwife and mother, not CEO」。とはいえ、ご主人の仕事がワイナリーの経営なので、子育ての役割をかなり分担してもらうことができた、ワーク・アンド・ライフ・バランス というものは、理論だけで実際は存在しない(そのようにはできないし,やっても機能しない)という意見でした。

 

2.Robert A. Katz : Chairman and CEO, Vail Resorts

  Vail Resorts とは1991年に設立された、コロラドにあるリゾートですが、日本の 星野リゾートと同じように、この業界で急成長し注目されていて、50 Most Innovative Companies の一つに選ばれています 。カッツさんは、2001年の9/11 を契機に、インベストメント・バンカーの職をなげうってこの業界に身を投じました。この時代スキー業界はまだビジネスとして有力な分野とは考えられていませんでしたが、新しい視点からアウトドアスポーツのイメージを見直しRe-imaging the industry 「マウンテンリゾートのグローバル・リーダー」を目標に掲げました。

代表的なイノベーションがEpic Pass というシーズン券で、600ドル払えばVail Resorts のネットワークが無制限に使えます。(注 アメリカのスキー場はリフト代を払うのではなく、スキー場への入場料を払う)スキー場のシーズン券は、1800ドルが普通であったので、非常識と思われましたが、常連を作るためのコストと考えた狙いは成功、シーズン券の購入者は2万人(2008年)が現在では60万人に増加しています。

  リゾートには500室のホテル及びコンドミアムがあり、いろいろの商業施設(小売)が190ありますが、運営の基本は Every at Vail Resorts is expected to be a leader という考え方で Being emotionally intelligent であることが求められるとのこと。Know yourself 、Leadership is your relationship with others 等、EIの基本が強調されました。

 

3.General Daniel B. Allyn, 35th Vice Chief of Staff, U.S. Army

  毎回この会議には、軍人がスピーカーとして登場しますが、命のやりとりを生業とす る軍隊がもつリーダーシップについての知見は、一目置かざるを得ません。今回、関島が関心を持っていたのは、分散型のテロ組織に対する戦いに、陸軍は「どのようなリーダーシップの発揮の仕方が必要と考えているか」を、Allyn将軍の演説から垣間見ることが出来るかどうか、でした。正規軍との戦闘では、指揮命令系統のハッキリした先頭に立つリーダーシップが有効だが、テロ組織のように小グループで自律的に行動し、組織の中核がどこかが分かりにくいネットワークに対する戦闘では、リーダーのところに情報を集中し、決断、実行というプロセスでは、防ぎきれないというのが実感だからです。

  将軍のコメントは、現在の戦いは、Decentralized な環境で他の組織と共同で活動することが求められるので、リーダーは「理解して、見える化し、言語化し、決断して、実行をリード、結果を分析し、再び理解して以下のプロセスの戻る」という形でリーダーシップを発揮する必要がある。この場合、ボトムアップが不可欠ゆえ、部下への権限の委譲が大切。組織間、地域間の情報交換を密にして、従来以上にチームとして機能するよう努力しなければならないというものであった。

このことを表現するために使われた言葉は、各メンバーが「pay attention to what you do」しなければならない、 であった。(注 「 」内は、アイゼンハワーがDデイの時、「怖いけれど、どうしたらよいか」という兵士の質問に答えた有名なセリフ)

  なお、第一線にも女性を投入するという目標を達成するための人材供給のルート(リーダーシップ・パイプライン)は、20年かかったが完成しつつある、というコメントは彼我の差を感じさせるものでした。

 

以上

 

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