長期的なインセンティブであるストック・オプションやLtip にかかわる動きとして最近注目されてきたのは、
clawback(クローバック)とよばれる条項の導入である。claw とはクギ抜きのことで、打ってしまったクギを引き抜く道具である。 clawback とは、公共投資や社会保障などで膨らんだ政府の支出増を増税で補填することを意味する。一旦払ったものを税金で取り返すのだ。これが転じて、ヘッジファンドなどの成功報酬の契約条項に使われている。
運用成績に連動して決まる成功報酬が、大きくなって一定額を超えた場合、超えた分をファンドに返還する、あるいは損失が出た場合の補てんに使うなどとした規定をいう。このルールを長期報酬制度であるLtip にも取り入れようという動きである。処遇制度上は、払ってしまったインセンティブを、後になって「返してくれ」とは、労働法規上かなり無理がある規定といえる。