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コーヒーブレーク(41)

 
長寿命化とキャリア戦略4 会社が準備しなければいけないことU

戦力外通知ができる体制の準備

  従業員に期待することとして、「能力開発の責任は双方にある。雇用は保証できないが、雇われる能力を身に付ける機会の提供は保証する。」と明示したとしよう。そして、双方が努力したとしても変化の激しい時代、「野球は止めて、明日からサッカー」現象は、避けら れない。各人が自分の専門性レベルの認識に従がって、進むべき方向、他社に行って野球を続けるか、サッカーをするか決めざるをえない。

学習の機会があったのにもかかわらず利用しなかったゆえ、他社で通用する能力がなく、さりとて新しい職場でも使い道に乏しいという人には、活用しにくい人材として戦力外通告が正しい。だが、いきなり戦力外通告をされ「あなたが選択した結果でしょう」と冷たくいわれても従業員も困る。なんらかの予備的ステップが必要である。

 

戦力不足通知

  こういう事態を避けるための方法は、日頃から働きぶりについて明確にフィードバックをおこなう以外にない。「会社が期待している水準に達していません」という戦力不足通告があれば、対応策を考えるはずだ。だが、HRMのシステムとして整備するのは、かなり難しい。戦力不足通告にたいする反論は色々ありうる。人は自分の能力不足など認めたくないのだ。

  最もポピュラーな反論は「評価基準がおかしい」だ。この反論に対抗するため(というだけではないのだが)工夫されたのがジョブグレード制である。仕事の難しさを評価する基準を決め、さらに仕事の出来具合を評価する基準を明らかにして、各人の業績評価を行う。これに対する反論は、「自分に適した仕事に配置されていない」である。(この反論の変形に、部下に恵まれていないや、予算が十分でないなどがある。)

目標管理制度、評価のフィードバック面談、将来就きたい仕事についての自己申告、空いたポストは公募する、などが対策となるが、個人毎の価値観の問題もあり必ずしも適材適所を実現する方策とはなりえない。適職信仰は間違っていて、本当は「適職は自分で創るもの」なので、それが実現できそうにない場合、職場あるいは会社を替わるべきである。

 

従業員側の選択肢

  戦力不足通知を従業員が認めたとして、戦力向上のための道具が用意されていなければ、問題は解決しない。マネジメント能力やリーダーシップの向上のため訓練プログラムが必要で、社内で提供できない場合は外部の研修が受講できる制度が必要である。

  会社の期待に応えられない事情を持つというケースもある。本人の病気、育児や介護の負担がそれだ。この場合の対応策は育児休暇、介護休暇、配偶者の異動にともない勤務場所や仕事の変更を支援する等の制度だ。仕事の責任や負担を一定期間軽くするという方法もある。「登坂車線制度」と関島は名づけているが、しばらくゆっくり働き、問題が終了したら元の働き方に戻るという制度である(登坂車線にいる間は給与や賞与は下がる)。

 

多様な働き方が成立する条件

  一般に、多様な働き方を認める会社が良い会社という論調がある。それは間違ってはいないのだが、働き方について誤解を生みやすい。個人の希望には沿っているが会社の希望が表明されていないからだ。会社の希望を整理すると「期待することにきちんと応えてほしい。時間とともに成長して、より難しい仕事が出来るようになって欲しい。出来れば長く働いてほしい。長く働けるよう、いろいろ配慮はする。期待に応えられない場合は、応えていないと通知するので対応策を考えてください」である。

  会社は、個人が私的生活と会社の生活の両方に満足したいと思うことには賛成である。なぜなら現代の競争は二兎以上を負うのは当然のことだからだ。会社もいろいろなことを同時追及している。持続性の維持のためには優位性の活用と探索の同時追及が不可欠で、指揮命令系統がはっきりした組織と、どちらかというと自由な雰囲気で仕事をする組織の二つを持たざるを得ない。またグローバルな価値観とローカルな価値観の両方を受け入れも当然と考えている。時に相反する価値の両方を同時に追及するのは自然なことなのだ。

重要なのはバランスをどうとるか、で会社と個人双方が折り合いをつけなければならない。これまでの経緯から考えれば、会社の方により努力が求められるが、それはそれとして、会社も従業員に期待していることは何かを正直に表明し、期待に応えていない場合は、節目、節目でたんたんと、戦力不足通知をすべきである。

次回は、この節目をどう作るかについて考えてみたい。

 

つづく

 
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