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コーヒーブレーク(45)

 
第21回ウォートン・リーダーシップ・コンフェレンス報告
2017年6月21日にフィラデルフィアでおこなわれた21回リーダーシップ・コンフェレンスで面白かった報告を紹介します。

1.オープニング講演:
  デジタル時代に求められる鋭敏かつ責任感あるリーダーシップ

アクセンチュア・ストラテジー、マネージング・ダイレクター Deborah Brecher

第4の産業革命の時代と目されるデジタル時代を生き延びるためには、リーダーは今後求められる能力を持つ人材の育成にリーダーシップを発揮することが、絶対に必要である。アクセンチュアの調査によれば、デジタル時代には次の3つに取り組むことを要求される。

■Reskilling の加速化
IAなどの進化により新たなスキルを身に付ける必要性が増加しているので、一番重要な課題。まったく新しいスキルを獲得するのではなく、現在持っているスキルは使える部分も多いので、それに新たなスキルを積み重ねる形が良い。生涯学習というマインドセットが不可欠。デジタル技術を使って学習すべし。

■仕事の再設計
高齢化、ライフスタイルや価値観の変化に対応し、能力をより開放できるような各人別の仕事の設計が必要。そのためには従来以上に柔軟性のある労働モデル(即応的、即興的なもの)を試作し、一部の組織でテストし、結果が良ければ適用範囲を広げるのが良い。コミュニティ(含むバーチャル)を作り易い文化や学習機会、新しい仕事やプロジェクトに関する情報が得やすい環境の整備が重要で、現役および退職した経営幹部を含む幅広い世代からの助言を受ける仕組みの創設も心がけるべき。

■タレント供給パイプラインの強化
全世界的なインターンシップ・プログラム、産業単位での教育コース、産学共同などの人材供給パイプラインを強化する努力が必要。 CEOはもっと人材開発にエネルギーを投じなければならない。

 

2.小部隊のリードに必要なリーダーシップ A Journey in Small Unit Leadership

ガーディアングループCOO Jeff Tiegs (退役中佐)
  リーダーシップ・コンフェレンスには毎回、軍人が一人は必ず登場するが、今回はデルタ・フォースなどの特殊部隊の指揮官経験者であった。特殊部隊は15人から20人で構成される小部隊で危険な任務に携わるため、互いの技量を信頼することが特に重要という話であった。話には孫子が多く登場、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」という有名なフレーズや、「部下は自分の子供のように大切に扱わなければならない」という考え方を紹介した。

信頼の事例として、建物に突入する場合、「右側の担当は、右側の敵は自分が絶対先に発見して対応、正面、左側のことは気にしない。一方、左側担当は左側に神経を集中、他の方面のことは仲間に任せる」といった役割分担が絶対に必要で、右側が左側を気にするようなことがあっては、突入は失敗するということであった。また、特殊部隊は極めて自律性が高く、作戦の実行については全ての権限が指揮官に委譲されるが、本部を安心させることに指揮官は配慮しなければならないというコメントは、状況的リーダーシップの事例として面白かった。

陸海軍合同でオペレーションすることがあるが、陸軍の場合、部隊が出発すれば後は報告がなくとも本部はあまり心配しないのに対し、海軍は任せるが報告がある方が安心するという傾向があるとのこと(軍艦の艦長は、艦内各部門の報告を受けて決断するのが習慣化しているので)。 自分で決めて良いという権限をあたえてくれた人や組織にたいする配慮もリーダーは考えるべしというLeading up、なるほど、と思う。

  講演では、軍用犬とともに建物に突入する等実際の場面(?)のビデオや写真がしめされ、迫力十分であった。(自爆犯を発見した犬が飛びついたので、部隊は難をのがれたというエピソードもあったが、後ろの席の女性が、爆死した犬がかわいそうだとブーイングしたのには驚いた)

 

3.リーダーシップの原則 Leadership Principles

プログレッシブ・コーポレーション 社長兼CEO Tricia Griffith

  バリバリのキャリアウーマンというタイプと異なる、感じの良いご婦人。実際は、昨年フォーチュンのthe 50 Most Powerful Women in Business に選ばれているので仕事の上ではそうでないのかもしれないが、穏やかな話し方で好感が持てた。
1988年に入社以来Progressive(保険会社で自動車保険が主流)で働いていて子供が5人、会社の文化と人が好きなので転職しようとは思わなかったとのこと。自分史に従って、自分の信条「オープンで仲間を信頼する企業文化を創る」について語った。以下心に残ったフレーズを紹介する。

Communicate what you know, when you know.
うろ覚えの知識や不確実な情報を伝えてはいけない。「分かった時点で」が大切。

Sometimes small gestures matter most. 
これは、自分の経験からも、そうだといえる。一言、言ってあげればよかったとか、誤解は防げたと振り返ると思うこと多いので。

Encourage healthy debate, then create unity.
これは日立精神の「和を以て貴しとなす」の解釈と同じ

Your action should match your words. 言行一致

Give credit and take blame. 上に立つものの心得

Management comes from hierarchy, leadership comes from anywhere.
これは各階層に リーダーは必要という変革型リーダーシップと、主役は持ち回りという状況型リーダーシップの理論が説くところを上手く説明している。

(ね、グリフスさんに親しみを感じた理由、分かるでしょう。)

 

以上

 
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