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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(49)

 
「働き方改革」とチームビルディングIIII 組織間のチームワーク

何を便利と考えるか

  組織が効率よく動くかどうかは、分業が上手くいっているかどうかにかかっている。組織はARCで出来ている(詳しくは「21世紀型人材マネジメント」コラムvol.62「組織と戦略I」参照)ので、この要素ごとに分業の状況を点検する必要がある。

  組織はビジネスモデルに従うのが原則だが、日本の場合、自分がすでに持っている技術や市場に対する知識をベースにビジネスモデルを選択するケースが多いので、「ビジネスモデルは組織に従う」になっていることが多い。それ故、組織の構造:A(architecture)は従来からある情報の流れ方を前提に分業がおこなわれる。例えば、営業、工場の対営業窓口、生産計画立案部署、製造現場、出荷部門、といった情報の流れに従って、組織区分がおこなわれる。この場合、部門ごとに分担する機能を明確に規定するだけでなく、情報の受け渡しについてのルーティン:(routine)、すなわち前工程の組織から何を受け取り、後工程の組織に何を伝達するかが、定まっていなければならない。

  しかし、AもRも、あった方が便利だから創られたので、「何を便利と考えるか」は組織を構成する人々の文化:C(culture)によって影響を受ける。設計部門と製造部門を分けた方が便利かどうかは、研究開発中心の企業と量産工場では、判断は異なるのだ。

 

ARCのコーディネーション

  そこで、文化とは何かが問題となる。文化とは、組織が積み重ねた経験から創り出した自己認識である。何が便利かについての判断は、内部コンテキスト(自分は何が好きか、何が得意か、成功・失敗などの経験から得たノウハウ等)についての認識と、外部コンテキスト(ビジネスをとりまく環境や競争相手の状況)の認識により決まってくる。それらの認識に基づいてビジネスモデルが選ばれているのであり、どうやって競争に勝つかについてのイメージも決まってくる。

  効率の良い生産が得意で、そのためにいろいろ工夫することが好きという企業文化であれば、勝ち方の基本は価格と品質に置かれ、新製品の開発速度や市場の変化の感知などが重要になる。その場合の組織構造は、営業、設計、製造といった組織間の連携はどちらかというとタイトで、お客からの苦情、それに対してとられた対策などの情報は、組織間を素早く流れなければならない。そのため、時に、各組織はルーティンや本来の役割分担の枠をこえて行動することが求められる。そして、一件落着後、どうして問題が起こったのか、再び起こらないようにするにはどうしたらよいかが議論され、結果がルーティンに取り入れられる。こういうプロセスが繰り返し起こるようであれば、組織のチームワークは良いと判断できる。組織の効率はARCのコーディネーションによって左右されると言ってよい。

 

レジェンド、逸話が大切

  チームビルディングでいう目標の共有化に相当するのが、競争条件、自分の強み弱み、勝ち方などについての認識の共有化である。部門ごとに専門分野が異なるので、多少の差異は仕方がないが、概ね同じように認識されていることが大事である。だが、分業の壁が 協力関係を妨げる。情報の流れを邪魔したり、部門益が全体益を凌駕する事態を起こしたりする。そこで、時と場合によっては、部門の枠を超えて行動することが大切だと、皆に知らしめる事例が必要になる。それが、レジェンドや逸話である。

  伝統ある会社では、伝説的社員の行動に関する話が引き継がれ、組織のチームワークを強化するインセンティブとして機能していることが多い。人材マネジメント的には、部門業績に連動する賞与の他、会社全体の業績に連動する賞与の支給とか、人材の部門間ローテーションとかの方法を「各組織が連動して動くためのインセンティブ」とするが、組織の壁はそんなものでは越えられないくらい強力である。だから、従業員の個々の心に働きかけが出来る逸話は重要なのだ。偉い人の話ではなく現場の英雄伝説を大切にしなければならない。

  働き方改革には組織の効率の向上が大切という意味で、今回はARCという組織の3要素から組織間のチームワークについて考えた。次回はチームが創られるプロセスという視点から組織の効率向上問題について考えてみたい。

 

つづく

 
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