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コーヒーブレーク(50)

 
「働き方改革」とチームビルディングV 組織の変革

組織は慣性を持つ

  これまで述べてきたように、分業の原理によって組織は創られる。そのため、組織は「分ければ離れる、分ければ固まる」という特性を持つが、同時に、「一度出来てしまうとなかなか変化しない」という性質も持つ。この性質が「ビジネスモデルは組織に従う」という現象を生む理由である。(詳しくは「21世紀型人材マネジメント」コラムvol.62「組織と戦略I」参照)組織はあった方が便利だという判断から創られたのだが、時間の経過とともにその理由は忘れられ、組織が積み重ねた経験の方が優先されはじめる。組織の慣性といわれる「経験によって創られたやり方を継続しがちな傾向」がこれである。

  だが本当は、外部環境の変化に応じ、「その組織があった方が便利かどうか」が、常に問い直されるべきである。人事部門や経理部門の役割はこれで良いのか、仕事の範囲は適正か、など等。

 

常設組織のチーム化

  本コラムのvol.47「組織とチームの違い」で常設組織とチームの違いを説明したが、チームは問題を解決するために創られる。従って、環境条件の変化によって、便利でなくなってきた組織を再び皆にとって便利なものにするためには、常設組織をチーム化する作業に取り組まなければならない。その時参考になるのはタックマンモデルである。

  タックマンモデルとは、Bruce W. Tuckman が1965年に出した Developmental Sequence in Small Groups という研究によるもので、チームが本当に機能するには、三つの発展段階「立ち上げ期」「混乱期」「平常化期」を経る必要があるというものだ。(その後に「活動期」「終息期」が来る)

 以下モデルに従って、常設組織のチーム化について考えてみよう。

 立ち上げ期は、ある問題の解決のためにメンバーが集められた段階。この場合、外部環境が大きく変化したことに対応出来るよう既存の組織を変革するのがテーマとなるので、まずどういう便利さを求めて現組織が作られたか、現状どの程度便利さが失われているかを検証する必要がある。

 

混乱期がカギ

  「和を以て貴し」となす日本の場合、混乱期を上手く創れるかどうかが最大の課題である。この段階を時々意図的に創れるようでないと、常設組織のメンテナンスはできない。

混乱期は同床異夢。集められたメンバーそれぞれの「現組織が作られた理由や現状の問題点についての理解」は、バラバラで、取るべき対策についての意見もバラバラである。この段階で十分意見を闘わせ、考え方を擦り合わせないと、対策を実行する段階になって反対意見が出て手戻りが発生したり、改善策が不十分なまま実行に移されたりして、目標が不十分にしか達成できない事態がおこる。

  この事態を避ける方策は、十分議論の時間をとるのと、現状認識の段階で、少数意見も無視せずに記録に留めることが大切になる。終息期に活動を振り返る時の手掛かりとして役だてるためだ。もう一つ重要なのは、チームのメンバーの人選である。現状組織がどのように機能しているか良く知っている人を選ばなければならないが、既存の組織に属する人は、自分の組織の問題点を必ずしも正確に把握しているとは限らないし、自分のしてきたことが議論の対象になるので、防衛本能も働く。よって、外部の関係者で利害関係のある人や人材マネジメント、プロジェクト・マネジメントなどの専門家も加える必要がある。

 

リーダーの役割

  チームに期待されているのは、チームのメンバー個々の能力を合計した以上の力を出して目標を達成することである。その為には、お互い助け合ったり、違う意見に触発されて新しい切り口を発見したりといった、いわゆるチームワークを発揮しなければならない。だがチームワークはひとりでに出来上がるものではなく、活動を通して出来上がるもの。 それゆえ、リーダーの役割が重要になる。

  リーダーの役割は、上記の段階ごとに異なる。立ち上げ期では、チームを結成した理由(現状に対する不満、変えた後の姿、変える手順などの大枠)をよく説明し、メンバーがそれを理解したかどうか確認しなければならない。混乱期には、「メンバーが自分の意見を明確に表明したかどうか、意見の対立が起こったかどうか」を、平常化期には、「活動の手順に合意が生まれたかどうか、メンバーは役割分担を理解したかどうか、中間目標は設定できたかどうか」等々を確認し、不十分であれば再度検討を促さなければならない。

 

原点に戻って考える

  結論から言うと、組織の効率向上のためには、「あった方が便利かどうか」という組織形成の原理に遡って考える作業がどうしても必要である。アーキテクチャーを変更するだけでは、問題は解決しない。情報のやり取りに関するルーティーンや便利さの判断に影響を与えている組織の文化について議論しなければ、組織の慣性にブレーキをかけることはできないのだ。

  今回は横の分業である組織の効率化について考えた。次回は縦の分業である職位間の効率化について考えてみたい。

 

つづく

 
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