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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(56)

 
新チームビルディングの技術I What to make から How to change へ

従来と同じ方法は続けられない

  拙著「チームビルディングの技術」の改訂版が、まもなく出版される予定だが、評判が良く、コンスタントに売れている現在の3版の改訂に、あえて踏み切ったのには、理由がある。「俊敏な行動が出来るチームを形成するためには、なにに留意しなければならないか」を、より分かり易く解説する必要が高まったと考えたのだ。ビジネスを取り巻く環境の複雑性が急速に高まって、変化に素早く対応することが生き残りの条件となりつつある。「変革は100日以内に完了すべし」というのが標準(?)とすら言われ始めている。

  「複雑性が高い」とは、「半ダースから数ダースのパラメータが同時に微妙なつながりを持って変化する状況」と定義されるそうだが、複雑性が高い場合の特徴点は、「今後起こる事の予測が難しい」ことだ。そういう場合の競争原理は、強い者が生き残るのではなく、変化に適応できた者が生き残るという進化論的なものになると考えられる。恐竜よりは哺乳類で、変化に適応する方法を早く見つけるためには、小規模なチームによる同時、多様なトライアル、が最も適している。

 

How to change のための三種の神器

  環境変化に素早く対応するための要件は、俊敏:agile、旅行:journey 即応体制:readiness だと考える。変化に対応する速度は、速ければ速いほどよいのだが、その意味合いはネットバブルの時代と現在では大きく異なる。

  ビジネスモデルの優劣が勝ち負けを決めると考えられた時代、似たようなビジネスモデルが次々と現れるので、新規参入を抑えるためには出来るだけ早く成長し市場を押さえてしまう必要があった。現在でもベンチャーキャピタルは、ベンチャーが早く規模を拡大し市場を押さえるよう指導する傾向が強いが、それは、その時代の名残である。

  現在は、ビジネスモデルを環境変化に合わせることの素早さが求められている。新しい仕事に取り組むにしても、従来の仕事から撤退するにしても、素早くやらなければならない。ぼんやりしていると新たな競争相手が突如あらわれ、お客を奪われるとか、周りのお店が次々撤退、いつのまにかシャッター街の店になっていたとかが、日常茶飯事となりつつあるからだ。たとえば、アマゾンは、その顧客データを活用して、リアルなスーパー事業に参入、既存のスーパーの強敵になり始めている。

 

中途半端は危険

  旅行journey が要件になる理由は、旅行は目的地に着くまで終了しないからだ。改革に乗り出したが途中でうやむやになってしまうとか、始めの意図と異なり、部分的な改革に留まってしまうとかは、よくある現象だが、変化の激しい時代中途半端な改革は、何もしないよりもっと危険だ。変化に適応できなくても、しばらくは過去の遺産で生き延びられるかもしれない。

しかし改革の途中は、これまでの仕事の収入は減少、新しい仕事からの収入はまだ無いといった状況になるので、あっという間の倒産が起こりうる。 それ故、変えると決めたら全力で変えることに集中しなければならない。戦闘で言えば、渡河中が最も危険なのだ。

 

不測の事態に対応できる体制が必要

  変化が激しい時代には予想外のことが起こる。「想定外のことが起こった!」として戦略立案者は、責任のがれはできない。想定外のことが起こる事を前提に戦略立案をすべきである。readiness即応体制の整備とは、不測の事態が発生しても、素早く方向転換できるような体制を予め準備しておくことで、本格的な対応体制が整うまで時間稼ぎをする部隊の整備などがそれにあたる。

  競争相手が新製品を出したが、対抗機種を開発するには時間が掛かる。しかし、放置しておいては市場を完全に抑えられてしまう。ではどうするか、と言った時に対応できる組織が予め用意されていればよい。例えば、対抗機種とはいえないまでも、「似たような機能を果たす製品を、他社から購入し自社ブランドで販売する」小規模な自律型組織の常設などがそれにあたる。マーケテイング、購買、営業、経理や総務などの専門家のチームにより結成され、状況の深刻度に応じて規模の拡大が素早くできることが要件である。普段は、通常の業務を担当していて(たとえば、新製品のテスト販売や新市場開拓など)不測の事態発生と同時に対応する。増員のための要員はあらかじめ指定されていて時々訓練も受けている、予算面でも直ちに対応できる仕掛けが整えてある、などの準備も必要であろう。

  How to change のためには、従来とは異なる方法を工夫せざるを得ないのである。次回コラムVol.57以降では、それらの工夫について考えてみたい。

 

つづく

 
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