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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(57)

 
新チームビルディングの技術II リーダーの役割の変更

リーダーが答えを持っていない

  これまでのリーダー像は、先頭に立って皆を引っ張っていく人であった。しかしそれは、リーダーが答えを持っている場合である。この方向に進めば、目的地に到達できると分かっている場合である。しかし、複雑な問題(定義は前回のコラムVol.56参照)の場合は、リーダーは答えを持っていない。

例えば、「売れる洗濯機をつくる」というテーマを与えられたとした場合、値段が安いのがよいのか、一度にたくさん洗えるのが良いのかなど、売れるのに必要な要件を定めなければならない。要件の候補は他にも、少ない水で洗える、音が静か、生地をいためない、洗剤の使用量が少ない、置き場所をとらないなどなどいろいろなものがありうる。

値段が安いためには、素材や部品の値段や組み立て工数などが関係するだけでなく、日本で造るか、中国で製造するかと言った問題も変わってくる。競争相手の洗濯機はどういう特徴を持っているかも考えなければならない。要は、答えは直ぐには分からないのだ。そのため、専門家を集めて考えなければならない。チームによる解決である。この場合、リーダーは先頭に立つのではなく、例えば、皆の意見を十分に引き出すことに注力しなければならない。

 

「発見」をもとに軌道修正を行う

  答えが分からない場合取られる一般的な方法は、「撃て、狙え」である。戦略論の表現だが、敵味方が入り組んで闘う戦闘の場合を思い浮かべてほしい。敵の位置が分かっていれば、狙って撃てる。しかし、どこにいるか分からない場合の対応は、敵が潜んでいそうなところを撃ってみるのがよい。撃ち返して来れば、そこに敵がいることが分かる。撃ち返してこなければ「敵がいるかいないか不明」ということが分かる。敵がそこにいても、敵もこちらの位置を探している場合、撃たれたことにより相手の位置を知ることが出来たので、撃ち返さない。それゆえ、撃ち返しがなくても「いない」と判定できず、「いるかいないかは不明」となるのだ。

これまでの戦闘を通して、敵の戦力がある程度分かっていれば、「敵のいる場所」「敵のいない場所」「いるかいないか不明な場所」の三つを突き合わせることにより、敵の配置が推定できる。つまり、「撃て、狙え」とは、経験して分かったことから次に進むべき方向を決めるという手法である。

  チームを運営する場合も、議論が錯綜して、どれが正しいかよく分からないとき、一つの案を取りあえず正しいと仮定して、議論を薦めたり実験してみたりするのがよい。それで不具合なことにぶつかったら、再び別な案を正しいとして対策を進める。複雑な問題に取り組む場合、紆余曲折があるのが当然と考え、まず歩きだし、発見したことにより方向を修正するやりかたである。この場合、リーダーの仕事は、先頭に立つことではなく、「方向が定まらないことに対する不安を上手に処理する」になる。

 

「先頭に立たないリーダーシップ」という考え方

  伝統的な先頭に立つリーダー像に代わるものは、場面、場面でリーダーの役割は異なるので、一人の人だけがリーダーを務めるのではなく、場面に即した人をリーダーにするという「状況対応型リーダー」や、何かを変える時にリーダーは必要と考え、フォロワーへの働きかけ(進むべき方向を示す大きな絵だけでなく、その絵がいかに素晴らしいかを説明したり、裏方として実行をサポートしたりするような作業)を重視する「変革型リーダー」である。組織内を広く動き回って同じ考えを持つ人のネットワークをつくる人や、個別の議論や行動が全体の動きと連動するように中立的な立場で支援する人なども先頭に立たずにチームをリードする人である。チームビルディングの技術をもつリーダーといってよい。

  リーダーとは先頭に立って指揮命令する人、率先垂範するのがリーダーといった従来型の理解では、複雑な問題に対応できない。How to changeの時代は従来と同じ考え方ではうまくいかないのだ。リーダー像についても広く見直す必要がある。

  「改訂 チームビルディングの技術」では「チームワーク」についての考えかたを従来のものから変えなければいけないと考えている。例えば「連帯責任」と「チームの活動の結果」の関連などである。次回はチームワークとは何か、改めて考えてみよう。

 

つづく

 
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