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3Dラーニング・アソシエイツ

コーヒーブレーク(63)

 
新チームビルディングの技術Y 目標達成後の「うれしい姿」を描く

「うれしい姿」が肝心

  変化が起こるには、@現状に対する不満が、行動を起こすのに十分なくらい高まっている、A変えた後の姿について皆の意見が一致している、B変える手順について合意ができている、の三つの条件が整うことが必要だが、Aが特に肝心である。なぜなら、条件@が強力だと、直ぐに問題点の分析やBについての議論が盛り上がってしまい、変えた後の姿についての議論がなおざりになる傾向があるからだ。
変えた後、「どんな嬉しいことが起こるのか」「どんなに便利になるのか」などが具体的にイメージされていないと、わくわく度が高い目標は、単なる夢物語になってしまう可能性が高い。夢を現実に脚が付いたものにしなければならないが、一方で、目標を現実に近づければ近づけるほど、達成意欲は損なわれる。そのバランスが難しいので、事前に十分議論しておかなければならない。

 

具体的に課題を考える

  目標達成後の「うれしい姿」は、「わくわく目標をブレークダウンする」ことにより目に見えてくる。高校の硬式野球部を甲子園に出られるチームに変えようとするとき、「目標、甲子園出場」では、「そんなことは無理、無理」と、部員の賛同を得られないかもしれないが、「初出場を果たした公立高校の練習方法を研究してみれば、うちにも可能性が開けるのでは」という提案なら「素質はおれたちとそんなにかわらないはずだ、やってみようか」となるかもしれない。「甲子園出場」という目標をたとえば、「初出場公立高校に学ぼう」と「得意なチームプーを一つ作ろう」にブレークダウンするのだ。その上で、自分たちの練習方法をどこから改善するかを考えれば、甲子園は本当のビジョン、遠くの丘の上の旗になってくる。うれしい姿は、「地方予選で有力校に勝ち、番狂わせと皆を驚かせる」姿だ。  そうなれば、自分たちの守備力、投手力、攻撃力のどこが不十分か、どこを改善すればよいかが自然と明らかになってきて、努力目標もはっきりしてくる。Bの、変える手順が定まり3条件が整うので、変化は起こり始める。

  一定の手順とは、一緒に仕事をする過程で、@他のメンバーの専門性に気付いて、相手の意見に一目置くようになり、A議論の結果よいアイデアが生まれ、Bおかげで、問題解決に近づいたと実感できる「小さい勝利」を得ることができ、Cチームの進むべき方向に自信を深め、Dチャレンジを続ける。というサイクルの繰り返しである。

 

コーディネーションとインセンティブを考える

  「うれしい姿」を描く際、もう少し考えなければいけないことがある。それは、コーディネーション(協働、協調)とインセンティブ(刺激、誘因)である。どういうものかを高速道路の例を使って、説明しよう。高速道路が出来てうれしいことは、例えば、「目的地に速くいくことが出来る」であろう。しかし、高速道路と隣接する国道とをつなぐ道路が未整備であれば、そこで渋滞が発生し、折角の時間短縮効果は、十分に発揮できない。協働が不足しているのだ。上記の問題が解決されたとしても、高速道路の利用代金が、その利便性にくらべて高過ぎれば、利用されない。高速道路を利用する誘因の不足である。
嬉しい姿は、自分だけで達成できるわけではない。関連する組織や人との関係を考え、協働が生まれる余地を創らなければなければならない。例えば、部活の予算を野球部が独占してしまうようでは、人々の協力はえられない。サッカー部もラクビー部も予算を必要としている。一方で、地方大会の一回戦で敗退が続いているようだと、全国大会の常連のサッカー部に新入生を取られてしまい、優秀な選手は集まらない。野球部に入る誘因を高めるためには、時々は話題になるような活躍をしなければならない。そのための練習であり、練習の仕方の工夫である。

組織の特性にも配慮が必要

  目標を達成するには、達成できた後のうれしい姿が不可欠である。しかし、チームが目標を達成した後のことも考えておかなければならない。組織の持つ特性は、慣性が高い、つまり、いったん出来ると、変わりにくいことだ。高速道路は、出来た後の利便さを求めて造るのだが、いつの間にか高速道路を造ることが目標になって、交通量の少ない都市間にも造るようなことが起こりがちである。「出来ると何が嬉しいか」を繰り返し振り返ることが必要な理由がここにある。イメージできないことはマネージできない。始める前にも嬉しい姿を思い浮かべなければならないが、終わった後も思い浮かべなければならない。

 

つづく

 
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