不確実性が高く「明日からサッカー」といった変化への対応を迫られる時代、個人も対応策を準備しておかなければならない。一番必要なのは、仕事に対する柔軟な考え方である。「この仕事しかできない、こうゆうやり方しかできない」ではなく、いくつかの仕事を担当出来たり、役割を分担できたりしなければならない。そのためには、大きな変化は当然あるとし、怖がらずに、立ち向かう覚悟を決めておくのが良い。
私の場合で言えば、仕事の上で4回大きな変化を経験している。
仕事は、家電品の製造工場の人事勤労の担当者としてスタートした。最初の変化は、本社の人事部への異動である。仕事は、部課長の処遇水準の決定(個人別ではなく階層別)であった。扱う金額と影響力(対同業他社、系列会社、地域)が、非常に大きくなった。
2番目の変化は、アメリカの海外子会社への転勤で、仕事の内容は人事勤労担当の課長だったがアメリカの労働慣行や労働法の学習が大変で特に雇用機会均等法対応には苦労した。初めての海外勤務なので、生活環境への順応にも時間を要した。しかしこの時の苦労のお蔭で、大概の変化に立ち向かう覚悟が出来上がった。帰国後は工場の勤労課長、総務部長を経験した。
3番目は、フランス への異動である。大型記憶装置の製造会社の立ち上げに加わった。職能としては変化がないが、ECとフランスの文化から生活に必要な知識・労働慣行まで、広く学習しなければならなかった。(日本はアメリカの事は比較的よく知っているが、欧州に関する知識は少なく、中でもフランスについては特定の人以外よく知らないのが普通。)
4番目は職能分野の大変化である。フランスから帰国後本社の人事教育部の副部長に就任、海外関係を担当したが、2年後、国際調達部に異動となった。世界中から資材を購入する部門である。購買実務の経験は乏しく、契約上の専門知識は1から勉強せざるを得なかった。助かったのは日本人以外の人を対象とした仕事の経験で、世界中7か所にある購買拠点に働く人々との関係は上手に保つことができた。雇用機会均等法の経験も役立った。どちらかというと、「売る方よりは買う方が、立場が上」というケースの方が多いのだが、それに寄りかからず、「対等な立場で長期的に良い関係を維持すること」を目標としていると相手に理解してもらうよう努力した。