最近、職場についての悩みを聞くと、「コミュニケーションが悪い」「言われたことしかしない」といった声が返ってくる。「人間関係がドライになった」とか「個人主義の弊害」という意見もきかれる。しかし、本当の理由は一言で言えば、まわりの状況が変わったのに、昔とあまり変わらないやり方しかしていないからである。
まわりの状況が変わったとはどういうことか。簡単に言えば、問題が複雑になったのだ。昔は、車が欲しいとかテレビが買いたいというように、人々が欲しいものがはっきりしていた。企業は、製品をどう作るかを考えればよく、職場に要求されるのはコストと品質の作りこみであり、それは、ある意味で答えが出しやすい課題であった。組織も正規従業員が中心であり、お互いの気心がしれていて、まとまりやすかった。
しかし、まわりに物があふれ、人々の欲しいものが多様化してくると、どう作るか(how to make)よりも,何をつくるか(what to make) が大切になってくる。当然、職場に要求される課題も単純ではなくなってくる。たとえば、売れない理由がデザインであれば、コスト削減に全力をあげても、努力はむくわれない。職場も正規従業員だけでなく、派遣社員、パート、アルバイトといろいろな雇用形態の人がいて、それぞれの人が仕事に対して抱く思いもいろいろであり、リーダーが先頭になって号令すればそれですむ、というわけにはいかなくなった。考え方の違う人たちに協力を求めようとすれば、何故その仕事をするのか、それぞれの担当する仕事が全体の仕事にどう関係するか等などを、丁寧に説明しなければならない。
リーダーも答えを持っているとは限らない。売れる洗濯機をつくれといわれても、答えは簡単ではない。お客さんの要求は、音が静か、水の使用量が少ない、生地を痛めない、一度にたくさん洗える、などといろいろあり、使う人の意見、組み立てる人の意見、売る人の考え、廃棄処理をする人の要求などを聞かなければ、答えはでてこない。問題が複雑になったのだ。
複雑な問題は一人で解決することは難しい。いろいろな人の知恵を集め、解決法を考え出さなければならない。解決案の実行にも多くの人の協力が必要である。利害関係の調整も求められる。「チームによる解決」が必要になってくる理由がここにある。