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次世代リーダーに必要な能力は、チームビルディングの技術
  (社団法人日本産業訓練協会「産業訓練」 2009年10月掲載)

 
 

問題が複雑になった

 次世代リーダーに必要な能力は、いろいろある。なかでも大切になってきたのは、チームビルディングの技術である。理由は、解決すべき問題が複雑になったからだ。職場の問題で考えてみよう。現在の職場には、正社員、派遣社員、パート、アルバイト等、いろいろな雇用形態の人がいる。これらの人々が仕事に対して抱く思いもさまざまで、将来を考えて技能を身につけようと努力している人もいれば、与えられたことだけをすればよいと考える人もいる。

これらの人々を指導する立場の人にも、自分にもう一つ自信が持てない人もいれば、子育てや介護の問題を抱えている人もいる。こういう職場構成のもとで「仕事の効率向上」を求められた場合、リーダーの仕事は従来に比べ複雑になる。組織の目標をどうやってメンバーに理解してもらうか、役割分担はどうするか、私生活と職場生活のバランスをどう保つか等など、いろいろ考えなければならない。

一方で、リーダーが答えを持っていない問題も増えてきた。例えば、「売れる洗濯機をつくれ」といわれても、答えは直ぐには分からない。水の使用量が少ない、音が静か、生地を傷めないなど、いろいろな答えがありうる。最近では廃棄する時に簡単という答えもある。答えを出すためには、使う人、売る人、作る人、廃棄する人など、いろいろな専門家の意見を聴かなければならない。

 

チームビルディングの技術

 立場の異なる人で作られている集団が共通の目標を作ろうとする場合や、答えが直ぐには分からない問題を解決しようとする場合は、対策チームを作り解決策を検討することになる。答えが分かっている問題の場合は、リーダーが先頭に立って取り組めばよい。しかし、チームによる解決を目指す場合は、リーダーの役割は、「多くの人から知恵を引き出し、それを使って、問題を解決すること」になるので、先頭に立つのではなく、メンバーが活発に議論出来るよう配慮したり、論点を整理したりする役割を引き受ける必要がある。

一般的には、日本は集団主義なのでチームで活動するのが得意だ、と思われてきた。しかし、本当はそうではない。日本のチームワークの良さとは、仲良く物事を進めることに重点があり、新しいものを創り出すチームワークではない。これは、対立を避けようとする傾向が強いのと、自分の意見を説明することが上手ではないことに原因がある。考え方の異なるメンバーと一緒に仕事をするのは得意ではないのだ。だが、協力し合うだけでなく、お互いの知識をぶつけ合うことで刺激をうけ問題解決の新しい切り口が生まれるといった、化学反応のような変化がおこらないと複雑な問題は解決できない。

 

求められているのは自律型のプロ人材

 チームによる問題解決を目指す場合、チームを上手に運営する能力が必要になる。それをチームビルディングの技術と呼ぼう。チームは立ち上げ期、混乱期、平常化期という三つの局面を経過して、ようやく本来の力を発揮する活動期に入ることができる。リーダーの役割は、局面ごとに異なり、例えば、立ち上げ期にはチームを作った理由をメンバーに説明しなければならないが、その場合、現状に対する不満、変えた後の姿、変えるためのおおよその手順の三つの視点を説明に取り込む必要がある。
混乱期には、メンバーが自分の意見を明確に表明したかどうか、意見の対立が先送りされなかったか、などを確認することが仕事になる。平常化期には、活動の手順や役割分担、中間目標などに関する合意形成に努力しなければならない。

 

複雑な問題に対処するのにも自律型プロ人材が不可欠

 チームビルディングの局面は、初めは活動期までで終わっていた。しかし、チームの解散前の活動の重要性に気がつき、後に終息期が付け加えられた。理由は、競争に勝つためである。現代の競争では勝ちパターンは長続きしない。勝ち続けることは難しく、たとえて言えば5勝3敗なら試合を続けられるが、3勝5敗では退出を迫られるという状況にある。勝っても負けても、一試合ごとに強くならなければ生き残れない。そのためには、経験から学ぶことと、活動を通して人を育てることの二つが出来なければならない。
チーム及びメンバーのそれぞれが、経験を振り返り、「次の試合に勝つことにつながることは何か、そのためには何を出来るようにならなければいけないか」を整理し、次の目標を定め、それに向かって具体的に努力しなければならない。

 次世代リーダーに求められるのは、チームビルディングの技術である。マネジメントの基本で、皆を本気にさせ、化学反応をおこし、新しいものを生み出す技術であり、手本となる人や少し難しい仕事を提供することにより、成長を促す手法である。問題解決の方法も次につながるものでなければならないのだ。

 
 
以上
 
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関連情報
本ホームページ内に、チームビルディングについての著書やプログラム提供のご案内もございます。併せてご参照ください。

・著書「チームビルディングの技術─みんなを本気にさせるマネジメントの基本18」
・個別人材開発プログラムの提供「チームビルディング講座のご案内」
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