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21世紀型人材マネジメント
 -組織内一人親方に好ましい生態系の創り方-

 
VOL.119 HRM戦略再論(2) 「抵抗勢力としての企業文化」対策

「企業文化は、変化に対する抵抗勢力

  HRM戦略の主要なテーマは、ビジネス・モデルにそくした企業文化の構築である。How to change の時代、ビジネス・モデルも環境変化に素早く適応できなければ、生き残れない。それゆえ戦略目標は、変化を当然と受け止める企業文化の構築になる。しかし、企業文化はこれまでの経験から組織が学習したことの積み重ねの上に作られているため、変化しにくいという慣性を持つ。変化にたいしては、企業文化は、抵抗勢力なのだ。コラム(95)〜(101)で変えるための方策について議論しているが、改めて検討しなければならない問題に、リーダーシップの在り方がある。そもそもリーダーシップは、「変える時に必要なもの」なのだが、「その発揮の仕方は状況による」からだ。

素早く変化するときに必要なリーダーシップ

  リーダーシップ理論は、「効率を上げる」ためのリーダーシップから、「競争に勝つ」ためのリーダーシップに変化し、勝つためには変革することが必要と考えられ、変革型リーダーシップが登場した。「変える」に着目するといろいろなことに目が向くようになる。リーダーだけでなくフォロワーの働きも重要になるし、リーダーが答えを持っていないような問題については、先頭に立たないリーダーシップというものも大切になってきた。
  では、「変化に素早く対応するためのリーダーシップは、どのようなもので、あるべきだろうか?
  素早く変化するためには、チームのメンバーの意志を統一する必要がある。特に、「変化は当然」という企業文化の構築を目標とするのであれば、メンバーが皆、変わることに賛成していなければならない。この場合、おおきな危険があり皆が、「大変だ、変わらなければ」と感じているケースとは、状況が異なる。「差し迫った危機のあるなしにかかわらず、皆が、変わらなければならないと思っている」というのが目標とする状態である。そのため、抵抗勢力としての文化を何とかしなければならなくなる。

破壊者としてのリーダー

  文化は、従来と同じ方法をつづけたいという慣性をもつ。そのため、変えようとする時リーダーはこの慣行を、先頭に立って、破壊しなければならない。どちらの方向に進むべきかについては、答えを持っていないかもしれない。しかし、従来どおりの方法は続けられないという答えは持っている。まづは現状破壊にリーダーシップを発揮しなければ、どちらの方向に進むべきかについての議論は始まらない。ただし、破壊と同時に、建設的な対立が生まれるよう議論をリードしなければならない。Leading in a context of conflict で、今年のワートンのリーダーシップ コンフェレンスのテーマでもあった。
  これはチームビルディングの技術でいう「混乱期の生成」で、立ち上げ期と本格的な活動期の間にどうしても必要なステージである。これがないと手戻りが発生したり、意味ある結論が出なかったりしてしまう。意見の対立が化学反応をおこし、新しい切り口や新しいアイデアを生むので、対立を避けるのではなく、意見の違いを認識させると同時に、それを克服する方法を考えるよう議論をリードするのがリーダーの仕事になる。先頭に立つリーダーシップ(破壊)と、先頭に立たないリーダーシップ(議論のファシリテーション)の同時活用が必要となる。企業文化は、経験からの組織学習から生まれるので、従来の方法を破壊し、新しいやり方を創造した経験を繰り返す必要がある。そのため、リーダーは継続的に破壊する人でなければならず、同時に、建設的な対立を引き起こす人でなければならないのだ。

ビジョンの手助け

  変化は当然という文化をつくるためには大きな絵ビジョンの手助けはどうしても必要である。進むべき方向はこっちだという遠くの丘の上の旗で、そこに至る筋道はいろいろあってよい。状況により右に行ったり左に行ったりしても、かまわないのだ。遠くの旗について合意が出来ている限りリーダーは、「大いに意見を闘わせ、方向を決めたらよい」と、ニコニコしていればよいが、あまりに議論が、ビジョンの示す進むべき方向から逸脱するようであれば、もとの位置にもどすことに努力しなければならない。道に迷った時、こっちの方向ですよ、と示すのがビジョンの役割なので、それをフル活用すべきである。ビジョンそのものの変更は、自己認識の変更を伴うので、ビジョンを取り巻く内外コンテキストの再定義re-definition が必要となるので別なテーマである。

※続きをお楽しみに。

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