HRM戦略の主要なテーマは、ビジネス・モデルにそくした企業文化の構築である。How to change の時代、ビジネス・モデルも環境変化に素早く適応できなければ、生き残れない。それゆえ戦略目標は、変化を当然と受け止める企業文化の構築になる。しかし、企業文化はこれまでの経験から組織が学習したことの積み重ねの上に作られているため、変化しにくいという慣性を持つ。変化にたいしては、企業文化は、抵抗勢力なのだ。コラム(95)〜(101)で変えるための方策について議論しているが、改めて検討しなければならない問題に、リーダーシップの在り方がある。そもそもリーダーシップは、「変える時に必要なもの」なのだが、「その発揮の仕方は状況による」からだ。
文化は、従来と同じ方法をつづけたいという慣性をもつ。そのため、変えようとする時リーダーはこの慣行を、先頭に立って、破壊しなければならない。どちらの方向に進むべきかについては、答えを持っていないかもしれない。しかし、従来どおりの方法は続けられないという答えは持っている。まづは現状破壊にリーダーシップを発揮しなければ、どちらの方向に進むべきかについての議論は始まらない。ただし、破壊と同時に、建設的な対立が生まれるよう議論をリードしなければならない。Leading in a context of conflict で、今年のワートンのリーダーシップ コンフェレンスのテーマでもあった。
これはチームビルディングの技術でいう「混乱期の生成」で、立ち上げ期と本格的な活動期の間にどうしても必要なステージである。これがないと手戻りが発生したり、意味ある結論が出なかったりしてしまう。意見の対立が化学反応をおこし、新しい切り口や新しいアイデアを生むので、対立を避けるのではなく、意見の違いを認識させると同時に、それを克服する方法を考えるよう議論をリードするのがリーダーの仕事になる。先頭に立つリーダーシップ(破壊)と、先頭に立たないリーダーシップ(議論のファシリテーション)の同時活用が必要となる。企業文化は、経験からの組織学習から生まれるので、従来の方法を破壊し、新しいやり方を創造した経験を繰り返す必要がある。そのため、リーダーは継続的に破壊する人でなければならず、同時に、建設的な対立を引き起こす人でなければならないのだ。