欧米を中心に所得格差の問題が取り上げられている。企業の所有者である株主の利益を第一に考える経営者がよい経営者ということで、経営者の仕事は利益を上げることだという考え方が強くなり、その結果、事業部門を売り買いして会社の業績を高めたり、自社株買いで株価の引き上げを狙ったりする一方で、従業員向けの経費や環境問題の対策費を抑制するなどコストの削減に努力する経営者、経営幹部が賞賛されるようになった。そして、それらの人々に多額の報酬を支払う傾向が生まれた。この仕組みを強欲資本主義と呼び、大きな所得格差を生んだ原因とする声が高い。
本当にそうだろうか。確かに、利益を追求するのは正しいことだとする考えが強欲資本主義とつながる。しかしそのベースには、競争は良いことだとする文化がある。競争の結果、良いものとそうでないものが区別され,格差がうまれるので、公正な競争であったかどうかは問われるが、格差イコール悪いこととは思われない。文化は物事の好き嫌いに大きな影響力を持つ。アメリカでダークサイド派が有力なのはここに理由がある。経営者に対する高額な報酬だけが原因ではない。一方、日本の場合は、競争は必ずしも良いものとは思われていない。競争よりは協力が優先され、そのため競争制限的な価値観が有力だ。正義の味方派が主流である。経営幹部の報酬もそれほど大きくはなく、所得格差も小さいが、アップルもグーグルも生まず停滞の20年である。