通常、企業は自分の国に軸足を置いて事業を展開する。他の国にも活動の拠点を作るのは、自国でそれなりに成功をおさめた後である。よって、企業文化は、自国の文化の影響が抜きがたいのが普通である。グローバル化が進むと競争の仕方も影響を受ける。企業文化も変化せざるを得ないのだろうか。
この当時、グローバル化が進めば、社会制度や経済構造が一定の方向に収斂化し、世界は均質化を迫られるという意見(ボーダーレスな世界説 convergence model)と、アメリカ・イギリス型の自由主義的市場経済、ドイツ・日本型の協調主義的市場経済のように国別に資源配分の方法が異なってくるという意見(国別資本主義多様化説 national varieties of capitalism model)の二つが有力であった。しかし、MITの研究結果はどちらも当てはまらないという。
MITの答えは、それぞれの企業が過去の経験から育んだ自分の資産を活用して市場に対応する、というものだ(動的遺産モデルdynamic legacies model)。 資産には企業文化も当然含まれるので、この答えは、グローバル化が進んでも企業は自分の持っている技術や人材、文化で世界と闘う と結論である。むろん企業文化は、国の文化の影響も受けるので、国別資本主義多様化説も否定はしていないが、地域別の差よりも、個別企業の差の方が大きいと結論している。
最近では中国のような国家主導型市場経済(モデル?)もでてきているので、国別説の仲間は増えているが、中国企業という特質よりは例えばIT企業といった特質の方が事業の進め方に影響力が強い、というのは納得できる結論である。