自律的に活動するのが仕事の基本である軟らかい組織には、規則によるような直接的コントロールはなじまない。よって、間接的なコントロールにならざるを得ないが、もっとも基本となる方法は、ビジョンによる制御である。
ビジョンとは、最終的に目指すものという意味で、戦略目標の最上位に位置する。戦略目標には階層があり、最上位の目標が下位の目標をコントロールするが、それについてはコラムvol.76「HRMの戦略目標再論」で詳しく説明した。だが、ビジョンが「スイングの幅をコントロールする」という視点から見て、上手に設定されているとは限らない。なぜならビジョンは夢を語るものであるからだ。では、夢を語ると同時に自律性をもコントロールできる良いビジョンとは、どういうものなのだろうか。
良いビジョンの第一の条件は、「進むべき方向を示す」であろう。森の中で道に迷い、どちらに行ったよいか分からなくなった時、「こちらだよ」と教えてくれるものでなければならない。その意味で、木に登れば見える「遠くの丘の上の旗」が良い。
第二の条件は、「どういう道筋を選んだらよいかを発見するヒントが示されている」であろう。最上位の下に位置する目標を設定するヒントが与えられていれば、考えやすい。「我々が活動するのはこの範囲」という宣言や、「こういうやり方が好き」という意見の表明も、良いヒントになる。要は、皆の道しるべ、となるビジョンが良いビジョンなのだ。